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中東産油国が注目する水素・アンモニア 日本企業に商機?

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アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合で記念撮影するアジア・中東の政府関係者ら=東京都千代田区で2022年9月26日午後4時31分、遠藤修平撮影
アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合で記念撮影するアジア・中東の政府関係者ら=東京都千代田区で2022年9月26日午後4時31分、遠藤修平撮影

 世界最大の産油地帯である中東諸国が、脱炭素エネルギーとして注目される水素・アンモニアの製造技術の開発に力を入れている。世界的な脱炭素化が進めば、国家財政を支える原油の需要が減少するためだ。日本にとっても「絶好のビジネス機会になる」(経済産業省幹部)というが、うまくいくのだろうか。

化石燃料の世界需要は減少へ

 「UAE(アラブ首長国連邦)は、現実的な脱炭素化を進めていくことができる戦略的パートナーだ。水素やアンモニアなどの技術開発で連携を深めたい」。西村康稔経産相は1月16日、訪問先のUAEで記者団に述べた。

 西村経産相はこの訪問で、日本とUAEが脱炭素技術で連携する政府間枠組みの設置で合意した。2022年末には、サウジアラビア政府と水素やアンモニアに関する共同事業についての覚書も交わしている。

 中東諸国が水素・アンモニア事業に力を入れる背景には、気候変動対策に伴うエネルギー情勢の地殻変動がある。

 中東は世界の原油生産の約3割、埋蔵量のほぼ半分を占める産油地帯。一方で、国際社会が50年の温室効果ガス排出実質ゼロを目指すなか、原油の需要は先細りが避けられない。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、化石燃料の需要は20年代半ばにピークに達し、50年にかけて緩やかに減少する見通しだ。

 中東諸国自体も脱炭素化を掲げている。UAEは50年、サウジアラビアは60年までの「排出実質ゼロ」を表明しており、化石燃料に依存してきた産業構造の転換は待ったなしだ。

中東が狙う水素エネルギー覇権

 そこで中東諸国は、新たな収益源として水素・アンモニアに注目した。

 水素・アンモニアは、水素と酸素の化学反応で発電する燃料電池に利用できるほか、燃やしても二酸化炭素(CO2)が発生しないため、火力発電で化石燃料を代替できる「脱炭素エネルギー」として期待されている。

 水素は天然ガスなど化石燃料から取り出したり、電力で水を分解したりして製造する。化石燃料が豊富で、太陽光発電に適した砂漠地帯の広がる中東地域は水素製造に適しているのだ。

 世界のエネルギー関連企業でつくる水素協議会によると、水素関連市場は50年に世界で2兆5000億ドル(約320兆円)規模に拡大する見込みだ。

 中東諸国はこの水素市場で、原油と同様の「覇権」獲得を狙っている…

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