中東産油国が注目する水素・アンモニア 日本企業に商機?
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

世界最大の産油地帯である中東諸国が、脱炭素エネルギーとして注目される水素・アンモニアの製造技術の開発に力を入れている。世界的な脱炭素化が進めば、国家財政を支える原油の需要が減少するためだ。日本にとっても「絶好のビジネス機会になる」(経済産業省幹部)というが、うまくいくのだろうか。
化石燃料の世界需要は減少へ
「UAE(アラブ首長国連邦)は、現実的な脱炭素化を進めていくことができる戦略的パートナーだ。水素やアンモニアなどの技術開発で連携を深めたい」。西村康稔経産相は1月16日、訪問先のUAEで記者団に述べた。
西村経産相はこの訪問で、日本とUAEが脱炭素技術で連携する政府間枠組みの設置で合意した。2022年末には、サウジアラビア政府と水素やアンモニアに関する共同事業についての覚書も交わしている。
中東諸国が水素・アンモニア事業に力を入れる背景には、気候変動対策に伴うエネルギー情勢の地殻変動がある。
中東は世界の原油生産の約3割、埋蔵量のほぼ半分を占める産油地帯。一方で、国際社会が50年の温室効果ガス排出実質ゼロを目指すなか、原油の需要は先細りが避けられない。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、化石燃料の需要は20年代半ばにピークに達し、50年にかけて緩やかに減少する見通しだ。
中東諸国自体も脱炭素化を掲げている。UAEは50年、サウジアラビアは60年までの「排出実質ゼロ」を表明しており、化石燃料に依存してきた産業構造の転換は待ったなしだ。
中東が狙う水素エネルギー覇権
そこで中東諸国は、新たな収益源として水素・アンモニアに注目した。
水素・アンモニアは、水素と酸素の化学反応で発電する燃料電池に利用できるほか、燃やしても二酸化炭素(CO2)が発生しないため、火力発電で化石燃料を代替できる「脱炭素エネルギー」として期待されている。
水素は天然ガスなど化石燃料から取り出したり、電力で水を分解したりして製造する。化石燃料が豊富で、太陽光発電に適した砂漠地帯の広がる中東地域は水素製造に適しているのだ。
世界のエネルギー関連企業でつくる水素協議会によると、水素関連市場は50年に世界で2兆5000億ドル(約320兆円)規模に拡大する見込みだ。
中東諸国はこの水素市場で、原油と同様の「覇権」獲得を狙っている…
この記事は有料記事です。
残り1703文字(全文2665文字)
時系列で見る
-
「カーボンフットプリント」知って挑戦 暮らしの脱炭素
22日前 -
グリーンの次はブルー?注目集める新債券は海洋国家・日本を変えるか
25日前 -
太陽光発電計画「災害対策が不十分」 県の慎重な審査、地元要望
30日前 -
大気汚染が生んだ傑作
31日前 -
脱炭素が「大きな市場に」 小泉元環境相が挑戦促す 北海道で講演
36日前 -
薄くて軽くて曲がる太陽電池、実装研究 横浜市と桐蔭横浜大が連携
38日前 -
原発回帰「許さない」 GX基本方針閣議決定 官邸前で抗議
38日前 -
規制委決定待たずGX基本方針閣議決定 西村経産相「問題ない」
38日前 -
政府、GX基本方針を閣議決定 原発推進へ政策転換
38日前 -
中東産油国が注目する水素・アンモニア 日本企業に商機?
42日前 -
川崎市、新築建物に太陽光パネル義務化 東京に次ぎ全国2例目
42日前 -
「くやしい判決」 横須賀市の石炭火力発電所、建設停止求めた市民
52日前 -
地球温暖化、ビールの味が変わる前に 品種改良や技術開発急務
52日前 -
老舗酒蔵が北の大地へ 酒造りにも温暖化の脅威
59日前 -
地球を冷やす 米スタートアップの「炎上商法」と日本への教訓
59日前 -
グレタさん、ドイツで警察に一時拘束 鉱山開発の抗議活動参加中
61日前 -
あるオリンピアンの葛藤 気候危機のいま巨大祭典は開催すべきか
62日前 -
ダボス会議、気候変動やエネルギー安保議論 16~20日
63日前 -
FRB議長、中銀による気候対策に反論 政策決定は政府が行うべき
68日前