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不測の事態が起きた今こそ、対話による危機管理が欠かせない。
バイデン米政権が、北米大陸を横断した中国の大型気球を「偵察目的」と見なして撃墜した。
同様の気球は過去にも飛来していたが、今回は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用する軍事施設の近くを通過した。
オースティン国防長官は声明で「米本土の戦略的拠点を監視する目的で中国が使用していた」と主張し、「容認しがたい主権の侵害だ」と非難した。
ブリンケン国務長官の訪中が直前に延期となり、昨年11月の米中首脳会談で合意した対話の機運に冷や水が浴びせられた。
両国間の緊張を高めた責任は、中国にある。
中国政府は「気象研究などを目的とする民生用が偏西風の影響を受け、不可抗力で米国の領空に入った」と説明しているが、説得力に欠ける。「偵察目的」を否定するならば、観測データなど詳しい情報を開示して疑惑を晴らすべきだろう。
ただでさえ米中は、台湾問題や半導体規制などの火種を抱えている。相互不信は深刻であり、偶発的なトラブルがきっかけで、関係が一気に悪化する危うさをはらんでいる。
今回も国際法を巡る解釈が真っ向から対立した。米国は、偵察目的での領空侵犯には国際法上、撃墜が認められるとの立場だ。中国は「民生用に対する武力行使は過剰な反応だ。国際的な慣例に違反する」と反発し、報復措置を示唆している。
国内世論の動向が対立を先鋭化させるリスクも浮き彫りになった。米本土上空に気球が飛来する中、野党・共和党などの強硬論が勢いづき、バイデン政権が取り得る選択肢は狭められた。
バイデン政権は米中関係を「世界で最も複雑で重要な2国間関係」と位置づけ、習近平指導部は対米関係を仕切り直そうとしている。互いにより慎重なかじ取りが求められている。
国際社会は、米中対立が激化することを望んでいない。価値観や認識の違いを抱える両国だからこそ、意思疎通を重ね、緊張をこれ以上高めないように外交努力を尽くさねばならない。