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トルコ・シリア地震 国際協調で救援に全力を

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 トルコ南部で大地震が発生した。隣国シリアも被災し、両国で多数の犠牲者が出ている。国際社会は協調して救援に全力を挙げる必要がある。

 地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・8だった。同じ内陸型の阪神大震災よりも大きく、揺れはイスラエルにも伝わった。

 6日未明の発生時には、住民の多くが就寝中だったため、崩壊した建物の下敷きになった。

 トルコ政府による被災者の救出活動は難航している。現地は道路事情が悪く、停電している。厳しい寒さと雨雪、絶えない余震が活動の支障になっている。

 シリアでは内戦が12年間続き、数百万の難民、避難民がトルコとの国境地帯で不安定な日々を送っている。内戦で壊れた建物は修復が進んでいない。

 そこに地震が追い打ちをかけた。被災したシリア北部には、政権軍と戦う反体制派の支配地域が多い。支援の受け入れを巡って、混乱も予想される。

 こうした複雑な事情がハードルとなって支援が遅れ、被害を拡大させるようなことがあってはならない。

 国連のグテレス事務総長は「アクセスが困難な被災地域では、多くの人々が人道支援を切に必要としている」と述べ、国際社会に協力を呼び掛けた。

 トルコ政府によると、すでに日米欧など数十カ国・地域から救援の申し入れがあった。欧州連合(EU)や英国などは救助の専門家や救助犬を派遣し、捜索に使う装備を送った。

 日本政府は行方不明者の捜索、救助のために国際緊急援助隊・救助チームを派遣した。

 日本とトルコは伝統的な友好国だ。「地震大国」という共通点もあり、相互支援を通じて信頼関係を深めてきた。震災の知見を支援に生かしたい。

 3年に及ぶ新型コロナウイルス禍からの出口戦略が模索される中、地震は起きた。各国救援隊が協力する環境は整いつつある。

 気がかりなのは、ロシアのウクライナ侵攻や米中対立で、世界の分断が深まっていることだ。それが救援の足かせとならないよう、各国は人命最優先で取り組む責任がある。

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