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あんなにプーチン政権のウクライナ侵攻を支持していたのに。最近になって「今さら反対しても仕方がない」と、心の揺れをにじませた弱気な言葉を口にするようになった。日本の大学に通うロシア人留学生のレナさん(仮名)は、祖国で暮らす母の異変に気づいた。侵攻開始からまもなく1年。ロシアの母は今、何を思うのか。【大野友嘉子】
「ウクライナはすごい」と褒めていた母
レナさんが記者の取材に初めて応じてくれたのは、侵攻直後の2022年3月。対露制裁で、ロシアから日本への送金ができなくなり、母親からの仕送りも受け取れなくなっていた。困窮するレナさんの日本での暮らしぶりについて記事(「キャッシングして学費に」 ロシア人留学生の苦悩)にした。
10カ月後の今年1月、再び取材に応じたレナさんは、母の父方のルーツがウクライナだと教えてくれた。母はウクライナに親愛の情を持っていた。コメディアンとして知られたゼレンスキー氏が19年にウクライナ大統領に就任すると「すごい国ね。芸能人が大統領になるんだから」と羨むように話していた。
侵攻が始まると母親のスタンスは「秒で変わった」。プーチン氏を熱烈に支持するようになり、ロシアでゼレンスキー氏の「薬物中毒説」が報じられると、同調して非難した。
ロシア兵によるウクライナでの虐殺や略奪行為については欧米メディアだけでなく、ロシアの独立系メディアも報じた。レナさんは、そうしたニュースを通信アプリで母に送り続けた。
「自分の国を悪く言うなんて」と母は取り合わず、しまいには「嫌な気分になるからその話はしないで」と突き放した。侵攻から半年たった夏の終わりごろには戦争について話題にするのをあきらめた。
再び議論を交わそうと思ったのは暮れの12月。レナさんがマルクスとエンゲルスの「共産党宣言」(1848年)を大学の講義で読んだのがきっかけだった。共産主義の「聖典」だが「旧ソ連で誰も読んでいなかったのでは」と感じた。
すべての人が平等な理想郷がソ連のはずだった。実際は党幹部らが特権階級となり人民を抑圧した。ソ連が崩壊した32年前まで共産党支配の時代を生きた母。「いまだにソ連を取り戻したいという人がロシアにいるのが理解できない」と伝えると、こう返事が来た。
「ソ連で疑問を持ちすぎると、どうなったと思う? 北朝鮮で疑問を持つとどうなる?」「いや、私の国(ソ連)は素晴らしかった。あれほど国民を思った国はなかった」――。ソ連のひどさは分かっていても、自分が生まれ育った国を否定したくない思いの表れなのか。
削除されていたメッセージ
レナさんはプーチン氏についても話を振った。「なんであんなひどい政治家をかばうの?」。母は「自分の国だから」と答えた。「お母さんが考えている自分の国って何? プーチンは関係ないじゃない」と切り返すと、「今…
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