朝鮮人虐殺「事実とすることに懸念」 メールに透ける都の“本音”
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<朝鮮人大虐殺を「事実」と発言する動画を使用する事に懸念があります>。東京都の職員が2022年に送った一通のメール。そこには、関東大震災時に起きた朝鮮人虐殺を認めないような言葉が並んでいた。震災から23年で100年。防災面でその教訓を今に伝える大切さが強調される一方、揺るがぬ事実である虐殺が「なかった」ことにされようとしているのか――。【金志尚、後藤由耶】
関東大震災100年 防災強調の一方で…
「在日コリアンの人たちに関する歴史を、行政として発信したくないという明確な意思を感じました」。現代美術家の飯山由貴さんはそう言うと、深くため息をついた。
飯山さんは過去の記録物などに基づき、社会と個人の関係を掘り下げた映像作品を手掛けている。21年には、戦前に都内の精神科病院に入院していた2人の朝鮮人患者の境遇を描いた「In―Mates」を制作。病院の看護日誌に残されていた2人の様子を、専門家の考察を基にひもといた約26分の作品だ。
都人権部が「待った」
ところが22年、都の施設で開かれた自身の企画展で上映しようとしたところ、中止を余儀なくされた。
企画展は、都の外郭団体である公益財団法人「東京都人権啓発センター」が主催し、都の施設「東京都人権プラザ」(港区)で8~11月に開かれた。センターの中村雅行事務局長は企画展について「精神障害者の人権や家族、歴史について考える趣旨で、飯山さんに依頼した」と説明する。
企画展で飯山さんは、精神障害のある自身の妹と共同制作した映像作品などを出展。当初の計画では付帯事業として「In―Mates」も上映する予定だった。同作で紹介される2人の朝鮮人は1930年から10年間入院し、病院で亡くなった。精神科病院での長期収容や在日外国人が抱える困難さといった、現代的なテーマに通じると考えていたという。映像を見たセンター担当者からも異論はなく、「上映を前向きに検討している感じがありました」と話す。
そこへ「待った」をかけたのが都人権部だった。
小池都知事の立場に触れ
センターの事業は、最終的に人権部が実施の可否を判断する。映像を確認した職員はセンター担当者に対し、上映に難色を示すメールを送った。
冒頭の一文も、そこに書かれていたものだ。記者は都に22年10月末に情報公開請求し、メールの全文を12月に入手した。…
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