日本経済に必要なのは「痛み伴う“手術”」経済学者・野口悠紀雄さん
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日本経済が苦境に陥っている。急激に進んだ円安で輸出企業は相変わらず恩恵を受けているが、輸入する原材料や製品の高騰などで国内の物価高に歯止めが掛からない。また、4月の任期満了に伴い交代する日銀総裁に、政府は、経済学者で元日銀審議委員の植田和男さんを起用する方針だが「異次元」の金融緩和はどうなるのか。経済学者の野口悠紀雄さん(82)が、ジャーナリストの池上彰さんと対談し、日本経済の処方箋などを語り合った。【構成・瀬尾忠義】
日本が頼った円安という「麻薬」
池上 昨年10月に米国の中間選挙の取材で半月ほど現地に滞在しました。ニューヨークでの食事代が衝撃的だったので、そのレシートを今も持っています。豚骨ラーメンが16ドル、ギョーザが12ドル。また、ご存じの通り米国はチップ社会。キャッシュレスの支払いだと、レジに18%、20%、25%とチップの選択肢が表示されます。20%を選んだので、税金も含めて結局5400円を支払いました。1ドルが150円という円安になっていた時期です。
野口 円安だと頭で知っていても、実際に経験されるとショックですね。
池上 四つ星ホテルの宿泊費は1泊朝食抜きで500ドル、7万5000円でした。とんでもなく日本は貧しくなってしまったのかと考えながら帰国しました。円安は日本を貧しくする、あるいは日本は円安という「麻薬」に頼ってしまっている、と実感しました。この現状をどのようにご覧になっていますか?
野口 円安は非常に大きな問題です。昨年の為替相場で急激に円安が進行したのでニュースでよく取り上げられましたが、昨年に限った問題ではありません。長期にわたって円安が続いています。日本は2000年代の初めごろから政府が為替市場に介入し、円安に誘導することを進めてきました。それ以来、10年ごろを除けば、円の価値が下がり続けています。
一方、傾向的に円高になっていたのが1970年代から90年代。この時は、池上さんが昨年体験された状況とは逆でした。
池上 円が強く、日本人が海外に行くとぜいたくができましたね。
野口 長期間にわたって円安が続いたことは、日本経済に大きな影響を与えました。円安に誘導して製造企業などが容易に利益を上げられるようにしろという声が高まり、実際に企業の利益は上がりました。技術開発を進めたり、新たなビジネスモデルを構築したりしなくても利益が増える。いわば日本経済は円安に安住してしまった。この状況が「麻薬に頼っている」と、池上さんが表現した意味なのです。本当は世界経済の大きな変化に対して、日本経済は大きな「手術」を行うべきだったのです。
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