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中学受験

2022年の私立・国立中の受験者数が首都圏で過去最多に。少子化が進む中、受験熱は地方にも広がっています。

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中学受験“失敗”した親子に知ってほしいノウハウ学力 和田秀樹さん

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中学受験に挑む子どもたち。第1志望校に合格できるのは3~4人に1人と言われている=東京都内で2023年2月1日、大沢瑞季撮影
中学受験に挑む子どもたち。第1志望校に合格できるのは3~4人に1人と言われている=東京都内で2023年2月1日、大沢瑞季撮影

 今年の中学受験シーズンもピークを越えた。第1志望校に合格できるのは3~4人に1人と言われる厳しい世界で、悔し涙を流した親子も多いだろう。多くの関連本を出すなど受験指導で知られ、精神科医でもある和田秀樹さん(62)は「合格・不合格より大切なことが受験勉強にはあります」と話す。不本意な結果に終わった親子にこそ知ってほしい、長い人生で役立つ“ノウハウ学力”とは――。【大沢瑞季】

過熱する受験 負け組にしたくない?

 首都圏の中学受験者数は9年連続で増え、今年は推定5万2600人と過去最多となった(首都圏模試センター調べ)。和田さんによると、今の親世代に中学受験の経験者が多いことも、近年の過熱化につながっているという。

 「今の日本人は昔と比べ、ものすごい勝ち組や上流になりたいという上昇志向はなくなっているように感じます。代わりに、我が子を負け組にしたくないという意識がすごく強いのではないでしょうか。それが、中学受験の過熱につながり、いい学校に入れなきゃ駄目だという強迫観念が生まれているように見えます」

 和田さん自身、中学受験をして難関校の灘中学(神戸市)に合格。2人の娘も、中学受験を経験している。ただ、受験問題を解くのが面白いと感じる子はいいが、向かない子に無理にやらせるのは、劣等感が残ってしまうなど弊害が大きいと言う。

 「中学受験は特に算数のセンスが問われがちです。早生まれか遅生まれかで、差がつく面もあります。でも、遅咲きの子もいるわけです。学校や塾は、向き不向きを見てくれません。中学受験の過熱ぶりに惑わされず、親が見極める必要があります」

 和田さんはその見極めを、子どもが小学5年生ごろまでにすることを勧める。「一番やってはいけないことは、子どもに自分はバカだと思わせることです。どうやって自信を持たせるかが大事です。受験してせっかくいい中学に入っても、勉強嫌いになり、大学受験で惨敗する……そんなケースもざらにあります。親はもっと長い目で考える必要があります」

 そう話す和田さんにも、向き不向きを強く意識する体験があった。小学生の頃は、スポーツが大の苦手。体が小さく、かけっこは決まってビリで、サッカーや野球も下手、鉄棒の逆上がりもできなかった。一方で口が達者で、悪口を言われても言い返す生意気な性格で、次第に仲間外れにされるようになった。

 だが、算数が得意だった和田さんは「勉強で見返してやる」と奮起し、灘中に合格した。「スポーツや芸術に比べ、勉強は素質に左右される要素が少ないので、努力が報われる可能性が高いのです。不向きなことよりも得意なことを伸ばし、別のところで勝てる機会を持つことが子どもには大事です」

受験で不本意な結果になったら

 向いていない子には中学受験をさせるべきではないとくぎを刺す和田さん。一方、中学受験に挑んだものの、志望校に不合格になった場合は、どう気持ちを立て直せばよいのだろうか。

 「大手名門塾の言うことや文化に乗せられると、親も子も中学受験がゴールになってしまいます。でも、本当のゴールはもっと先にあります。大学受験もあるし、大人になって社会で活躍できる人間になれるかがより大切です」

 志望校に落ちたことで、敗北感にさいなまれ続ける親子も少なくない。「でも、後からいくらでも逆転する方法はあります。子どもにはいろいろな可能性があり、ある方法でうまくいかなかった場合、やり方を変えるのは当然です。親に大局観があれば、中学受験に失敗しても『チャンスはまだまだあるから心配しないで』と言えるはずです」

 不合格になった子が春からの新学期にいいスタートを切…

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