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廃業撤回 「街の本屋」の心を動かしたもの=銭場裕司(東京社会部)

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弘明堂書店店主の天野日出雄さんと、廃業予定の撤回を伝える張り紙=横浜市南区で2023年2月20日午前11時9分、銭場裕司撮影
弘明堂書店店主の天野日出雄さんと、廃業予定の撤回を伝える張り紙=横浜市南区で2023年2月20日午前11時9分、銭場裕司撮影

 いったん決めた廃業を撤回した書店がある。営業継続を伝える張り紙を店先に出すと、その決断を喜ぶ投稿がネット交流サービス(SNS)上に広がった。街にあった本屋が姿を消していく。そんな厳しい時代に、何が廃業を踏みとどまらせたのか。

 横浜最古の寺と呼ばれる弘明寺(ぐみょうじ)に続くアーケード商店街にその店はある。横浜市南区の弘明堂(こうめいどう)書店。小説や雑誌、漫画、絵本など幅広いジャンルの本がそろっている。訪れると店主の天野日出雄さん(64)が話を聞かせてくれた。

本の売り上げは3分の1以下に

 店内には、かつての弘明堂書店の外観を撮影したセピア色の写真が飾られていた。戦前に祖父が始めたという。天野さんは高校卒業後から約45年にわたって、9歳年上の兄とともに店を切り盛りしてきた。

 出版業界には厳しい風が吹き、閉店に追い込まれた書店は多い。弘明堂の本の売り上げも1990年代のピーク時から3分の1以下に落ち込んだ。教科書の取り扱いが経営を支えてくれているものの、新型コロナウイルス禍でも本の売り上げが減ったことや、…

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