「またバリカンや…」 収穫前の養殖ノリ、食い荒らすギャング魚
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養殖ノリがまるで刈り取ったように消えてしまう現象が起きています。生産者にとってはまさに死活問題。漁師らが「犯人」を探索したところ、釣りファンに人気のあの魚だったのです。せっかく育ったノリに群がり、根こそぎ奪い取っていく彼らはさながら黒いギャングのよう。昼夜を問わず彼らの動きを追跡すると、意外な生態が明らかになってきたそうです。そして、それは身近な海の変化とも関係していたのです。
第1章 暴食クロダイを追え(1)
全国有数の養殖ノリの産地である神戸・須磨では、12月初旬から収穫作業が始まる。沿岸の東西約2・5キロの海域で育てたノリを、特殊な刃を備えた「潜り船」という専用船で刈り取っていく。数日後に収穫開始を控えた2022年師走の昼下がり、ノリ網が並んだ海面は柔らかな冬の光できらきらと輝いていた。
「ここもバリカンか……。端の方はまばらに残っていても、すぐにつるつるになる。これもなくなってしまうわ」
養殖業者でつくる「すまうら水産有限責任事業組合」代表、森本明さん(59)は、漁船の上から水面のノリ網を見つめ、そうつぶやいた。父親の代からこの海で養殖を続ける森本さんが、明らかな異変を感じ始めたのは数年前のことだった。
源平合戦ゆかりの須磨の海では1960…
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