唯一残った「エース」が決め手 1台10万円の発信器、次々途絶え…
毎日新聞
2023/3/2 08:00(最終更新 3/2 08:00)
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「すぐどこかに行ってしまった。へこむなあ……」
2020年の年の瀬のこと。兵庫県水産技術センターの主任研究員、高倉良太さん(36)は、実験データが示されたパソコンの画面をじっと見つめ、考え込んでいた。行動を追跡するために発信器を体内に埋め込んで海に放った10匹のクロダイのうち、9匹がたちまち姿を消してしまったのだ。
第1章 暴食クロダイを追え(2)
センターが取り付けた水中カメラによって、神戸・須磨のノリ養殖網で起きた食害の「犯人」はクロダイ(チヌ)だと判明した。そこでセンターは20年秋、クロダイの生態調査に乗り出した。超音波を使った小型の発信器を捕獲したクロダイの腹部に埋め込み、海に戻す。そうすると、ノリ網の近くの海中に取り付けた受信機で、クロダイが近くを通過した時間や位置などを把握できるようになる。学生時代や民間企業にいた時に、発信器を使った魚の生態調査に取り組んだことがある高倉さんには、うってつけのミッションだった。
1台約10万円する発信器をクロダイ10匹に取り付けることになった。…
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