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サカナ新時代

日本の海に「変化」が起きています。漁業の現場から食卓までその影響に迫ります。

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「腹パンパンや」 1匹で板ノリ3枚分以上も 一網打尽の妙案なく

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クロダイがかかった網を引き揚げるノリ養殖業の森本明さん=神戸市須磨区沖で2022年12月6日午後0時48分、柳楽未来撮影
クロダイがかかった網を引き揚げるノリ養殖業の森本明さん=神戸市須磨区沖で2022年12月6日午後0時48分、柳楽未来撮影

 2022年12月初旬のある日。瀬戸内らしい穏やかな陽光の下で、私(記者)は漁船に揺られていた。傍らでは、漁師たちが前日に仕掛けておいた刺し網を慣れた手つきで黙々と巻き上げている。同乗している兵庫県水産技術センターの研究員たちは、その様子を少し硬い顔つきで見つめていた。

第1章 暴食クロダイを追え(4)

 長さ360メートルある網を半分ほど巻き上げた頃、頭やひれが網にからまった、体長40センチ級の浅黒い魚体が水面から姿を現した。

 「チヌや、チヌや!」

 船上では、それまでの緊張した空気がほぐれ、沸き返った。すぐに2匹目、3匹目と水揚げされ、甲板で筋肉質な体を激しくばたつかせている。前日に仕掛けた網は、クロダイ(チヌ)捕獲のために少し違うやり方を試していた。新たな試みが功を奏したのか、この日は11匹を捕獲できた。「全く捕れない可能性もあったので、一歩前進です」。センター主任研究員の高倉良太さん(36)は、胸をなで下ろした。

 神戸・須磨の養殖ノリを食べるクロダイの生態を調べてきた高倉さんたちが、…

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