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14年ぶりに日本人の宇宙飛行士候補が誕生した。月探査時代を迎える宇宙での活躍が期待される。
世界銀行職員の諏訪理(まこと)さん(46)と外科医の米田あゆさん(28)の2人だ。諏訪さんは途上国の開発支援に長年携わり、米田さんは日本赤十字社医療センターで手術や救急医療に取り組んできた。
今回の選抜試験では、受験資格を大幅に緩和し、学歴や仕事の専門分野を問わないこととした。年齢制限も設けなかった。
選考では、英語力や協調性、健康状態などに加え、情報発信のための表現力も重視された。
宇宙開発の目的や担い手が大きく変化する中、多様な人材を確保するのが狙いだ。
応募条件の変更によって、大学の理系出身者以外の候補が生まれることも期待された。しかし、2人を含め、最終選考に残った10人中9人が理系出身だった。
応募者は過去最多の4127人に上ったものの、女性の割合が2割にとどまったことも課題だ。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は今後、5年ごとに飛行士候補を採用する計画だ。今回の選考のあり方を検証し、多様な人材の起用につながる工夫が必要だろう。
参考になるのが、欧州宇宙機関(ESA)の取り組みである。昨年、身体障害を持つ人を飛行士の候補に選んだ。
近年は、各国が月探査に力を入れる。米国主導の有人探査「アルテミス計画」も始まった。
日本政府の目標は、2020年代後半に日本人飛行士が月面に立つことだ。米田さんは記者会見で「月に行けるのであれば挑戦したい」と意欲を示した。
今後は、月の資源開発などで国際競争が激化する可能性がある。日米欧だけでなく、中国やロシアも計画を進めているからだ。民間企業の月ビジネスへの関心も高まっている。
飛行士には、より幅広い能力が求められる。実験などの技量とともに、民間と連携する柔軟性や、国民の理解を得るための発信力が一層重要になる。
日本人飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)で船長を務めるなど、重要な役割を担ってきた。月探査でも、新たなフロンティアを切り開いてほしい。