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放送の自律をゆがめ、表現の自由を萎縮させかねない政治介入があったことになる。ゆゆしき問題である。
放送法が定める「政治的公平」の解釈変更を巡る第2次安倍晋三政権内部のやりとりを記した文書について、松本剛明総務相が行政文書と認め、公開した。
立憲民主党の小西洋之参院議員が先週公表した文書と同じものだ。報道の自由に関わるとして、国会で野党が追及していた。
焦点は放送法4条で放送事業者に求められている「政治的に公平であること」の解釈だ。政府は従来、事業者の番組全体で判断するとの解釈を取ってきた。
しかし行政文書によると2014~15年、当時の礒崎陽輔首相補佐官が、特定の番組を安倍氏が問題視していると指摘した上で、全体でなく一つの番組で判断できるように、解釈の変更を総務省に迫っていた。
礒崎氏も「政治的公平性について意見交換したのは事実」とツイッターで認めている。
実際、15年に当時の高市早苗総務相が、一つの番組だけでも公平性を欠いたと判断し得るとの新しい解釈を示した。政府としても16年に「一つ一つの番組を見て、全体を判断する」との見解を出した。
松本総務相は「放送行政に変更があったとは認識していない」と強弁し、16年の見解についても「従来の解釈を補充的に説明したもの」と繰り返している。
だが、行政文書を見れば、官邸の働きかけによって変更が行われたのは明白だ。
放送法の根幹に関わる。本来なら官邸と総務省間の裏交渉ではなく、政府の審議会に諮るなどの手続きを踏むのが筋ではないか。
担当閣僚だった高市氏の責任は重い。にもかかわらず、「捏造(ねつぞう)で不正確」と主張し、自身に関する記述が事実であれば、議員辞職すると開き直っている。
放送法は第二次大戦後、戦争中にラジオ放送が政府の統制下に置かれ、国民の動員に利用されたことへの反省から制定された。
表現の自由や国民の知る権利に直結する重大な問題だ。政治が番組に圧力をかけようとするに至った経緯について、当事者は国会で説明すべきだ。