震災後の風評被害、よぎる沿岸漁業者 処理水放出「廃業する…」
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東京電力福島第1原発でたまり続ける処理水について、政府は海洋に放出する方針を決め、開始を「今年春から夏ごろ」と見込む。政府と東電は「関係者の理解なしにはいかなる処分もしない」と約束しており、福島県の漁業関係者から理解を得られるかが焦点だ。ただ、福島第1原発事故の風評被害を振り返れば、影響は福島県内にとどまらない恐れがある。改めて県内外の受け止めを探った。
「影響、子供や孫の代まであるかも」
2月上旬の早朝。茨城県日立市の木村勲さん(78)は市内の久慈漁港から沖に漁船を出した。この時期の主力はシラスだ。群れを取り囲むように網を入れ、昼までに計21籠(1籠約25キロ)を水揚げした。
久慈漁港は福島第1原発から南に約110キロ。原発事故後、県沿岸で取れたコウナゴから放射性セシウムが一時検出され、他の魚種も含めて休漁した。久慈のシラス漁は2011年5月に本格再開したが、取れた魚を仲買人に値切られた。息子に渡そうとして拒まれたこともあった。漁港の漁師も事実上、半分以下に減った。
それでも徐々に状況は改善し、21年にはシラスの水揚げ額が原発事故以前の水準の1キロ当たり400円台に戻った。
処理水が海洋放出されたらどうなるか。木村さんは「(原発事故後の)風評被害は何年も続いた。(海洋放出も)影響は子供や孫の代まであるかもしれないから、慎重に慎重を重ねないと」と求める。
「もっと現場の意見を聞いてほしかった」と話すのは県南部にある鹿島灘漁協の長岡浩二組合長(62)だ。東電側が説明に訪れたのは1回だけで、納得できていない仲間は多い。
宮城県石巻市寄磯浜地区で特産のホヤを養殖する渡辺喜広さん(61)は「このままでは多くのホヤ業者は廃業せざるを得なくなる」と窮状を訴える。
震災の前、県内のホヤの生産量は全国一の年間約8600トン。約7割を韓国に輸出していた。だが養殖施設は震災の津波で壊滅した。原発事故の影響で13年9月には、韓国政府が福島や宮城など8県の水産物の輸入を全面停止した。その状態は今も続く。
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