進む拘置施設集約 バス1時間1本…弁護士「被告の人権守られぬ」
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刑事裁判を受ける被告らが収容される拘置所。全国に8カ所あり、拘置支所も100カ所近くあるが、各地の拘置支所がここ数年、相次いで廃止されたり、収容を停止したりしている。この動きに抗議しているのが、日本弁護士連合会をはじめとした各地の弁護士たち。その背景を探った。
弁護士「青天のへきれき」
「1971年建設で老朽化した長崎拘置支所の建て替えは困難で、収容業務を停止し、長崎刑務所に集約することで対応したい」
長崎県弁護士会は2月上旬、長崎刑務所(同県諫早市)からこう伝えられた。長崎拘置支所(長崎市)が11月末ごろに収容を停止すると告げる内容に、同弁護士会刑事弁護委員会委員の山本真邦(まさくに)弁護士は「青天のへきれきだった」と明かす。
同支所には、長崎地裁(同市)で裁判員裁判を含む刑事裁判を受ける被告が収容されている。法務省矯正統計によると、2021年に1日平均で22人の被告を収容。県全体は1日平均37人で、約6割が同支所に収容されていることになる。
刑事裁判で弁護人となった弁護士たちは裁判の準備のために、被告と接見する必要がある。地裁から約5キロの距離にあり、同じ市内にある同支所までは、バスや電車を乗り継げば30分程度で通える。
一方、同支所の業務が集約される長崎刑務所は、地裁から直線で約19キロ離れている。最寄りの主要駅となるJR諫早駅からも約4キロ離れ、同駅からの路線バスは1時間に1本しかない。
加えて、長崎市内の弁護士が国選弁護人に選任された場合、国からの遠距離接見交通費は基準(事務所所在地の管轄簡裁から直線で片道25キロ以上など)を満たしていないため、支給されない。刑事事件で弁護人の大半を占める国選弁護人の報酬は「低い」との指摘があるうえ、交通費の負担も大きいとなれば「成り手不足にもつながりかねない」(山本弁護士)という。
山本弁護士は「接見に必要な時間が大幅に増え、事件数が多い長崎市から家族が被告に会いに行きにくくなるなど、拘置支所がなくなる影響は大きい。法務省はなぜ弁護士会と事前に協議せずに、収容停止を通知してきたのか」と憤る。
山口県でも「集約」
長崎と同様のケースは、老朽化や収容者数の減少を理由に、被告の収容を3月末に停止して下関拘置支所(山口県下関市)に集約さ…
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