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高市氏の「捏造」発言 耳を疑う責任転嫁の強弁

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 放送行政の担当閣僚だった政治家として、当時の部下に責任を押し付けるかのような発言である。

 放送法の「政治的公平」を巡る第2次安倍晋三政権内部のやりとりを記した総務省の文書について、当時の総務相だった高市早苗・経済安全保障担当相が「捏造(ねつぞう)だ」と繰り返している。

 立憲民主党の小西洋之参院議員が公表し、総務省が行政文書だと認めた。2014~15年、当時の礒崎陽輔首相補佐官が安倍氏の意向を踏まえ、総務省に解釈の変更を迫った様子が詳述されている。礒崎氏はツイッターで総務省と「意見交換」したことを認めた。

 にもかかわらず、高市氏は自らに関する部分は「正しい情報でないので捏造」だと断言する。捏造でなければ閣僚や議員を辞職する考えを示した。

 行政文書は、公務員が業務で作成し、組織内で共有、保管される公文書だ。政策の決定過程が分かるやりとりを残すことは、法律で義務付けられている。

 職員が高市氏に「大臣レク」(説明)した際の文書には、日時や場所、記録者が明記されたものもある。だが、高市氏は「放送法の政治的公平に関するレクを受けたことはない」と全面否定した。

 職員の視点でまとめた文書のため、受け止め方が違う場合もあろう。総務省幹部は「一般論として行政文書の中に捏造があるとは考えにくい」と国会で答弁した。

 ありもしない事実を公文書に記したのなら、犯罪的行為である。疑惑を掛けられた総務省は徹底調査すべきだ。高市氏は立証責任は小西氏にあると言うが、事実解明の責任を負うのは本人である。

 政府は森友・加計学園問題を受け17年に公文書管理の指針を改定し、可能な限り発言者に内容を確認するルールを設けた。ただ、今回の文書は改定前に作成された。

 高市氏は発言者に確認を取っていないことを理由に「正確性が確認されていない文書」だと強調する。だが、それだけで当時の部下が作成した文書を「捏造」だと決めつける強弁は耳を疑う。

 公文書は政策決定の公正さを検証するために不可欠な国民の共有財産だ。自らの発言でその信頼性を損なわせた高市氏である。閣僚としての適格性が問われている。

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