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ウクライナでの戦争が激しさを増す中、米国とロシアの偶発的衝突を招きかねない。
米軍によると、黒海の公海上空で露軍の戦闘機2機が米軍の無人航空機に近付き、このうち1機が接触した。米軍機は墜落した。
露軍機は無人機に向けて燃料を放出する妨害行為を行い、その際にプロペラを損壊させたという。一触即発の緊張状態だったに違いない。米軍は「無謀で危険な行為だ」と非難した。
ロシア国防省は接触を否定し、無人機が急に進路を変えて墜落したと主張しているが、米国防総省は妨害行為を収録したビデオの公開を検討しているという。
両国の衝突リスクが高まっている現実を突きつけた。
米国のウクライナへの支援は人道援助や武器供与だけではない。米軍が収集した軍事情報の提供も、その一つだ。
米軍の無人機はルーマニアの基地から発進し、ウクライナに近接した空域で偵察活動を実施した。継続的に行われている任務だ。
収集した情報には露軍の動向も含まれるだろう。ウクライナ軍の作戦に反映されていることは想像に難くない。
露軍はこれを妨害しようと躍起になっている。目には見えないが、両軍が戦場近くでにらみ合い、緊張が常態化しているのは疑いようがない。
国際社会はウクライナから撤退するようロシアに圧力をかけ続けなければならない。同時に米露の衝突を防ぐことも、世界戦争を回避するために重要だ。
双方の軍と外交当局の意思疎通が不可欠だ。昨年2月のウクライナ侵攻開始直後、米露両政府は新たにホットラインを設置した。互いの意図を読み誤って軍事衝突に発展するのを避ける狙いがある。
機能したかどうかは不明だが、米国は「報復」する姿勢を控え、ロシアは「紛争」を望まない意思を示しているという。冷静な対応と言えよう。
東西冷戦期のキューバ危機ではソ連軍の地対空ミサイルが米軍の偵察機を撃墜し、緊張が極度に高まった。危機を乗り越えることができた要因は、核戦争を回避するという政治の決意と外交努力だった。学ぶべき歴史の教訓だ。