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産む、産まない、産めない~私の場合

「怖かった」ホームで泣いた10代女性 内密出産した子へ贈ったもの

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熊本市の慈恵病院で内密出産で産んだ子供の足を包み込む女性の手。女性は「産んで良かった。とても大切な存在です」と語っていたという=同院提供
熊本市の慈恵病院で内密出産で産んだ子供の足を包み込む女性の手。女性は「産んで良かった。とても大切な存在です」と語っていたという=同院提供

 予期せぬ妊娠で悩む女性に病院で産める選択肢を――。病院以外に身元を明かさず子供を産む「内密出産」に取り組む熊本市の慈恵病院。病院が利用を公表したのは15日までで8人。「産みたい」「産めない」。答えが出せないまま病院にたどり着いた女性たち。彼女たちが病院に託した思いがある。

初事例は10代女性

 多くの人がせわしなく行き交うJR博多駅のホームで、女性は不安そうに立ち尽くしていた。手には小さなトートバッグだけ。ホームに駆け上がった慈恵病院の新生児相談室長、蓮田真琴さん(45)はすぐに「彼女だ」と分かった。

 走り寄って「慈恵病院です」と声をかけた。女性はぽろぽろと泣き出した。「赤ちゃんが死ぬんじゃないかと思って、怖かった」

 出産予定日が迫っており、この日の朝、出血があったという。博多駅から病院までは多くを聞かず、赤ちゃんの状態を確認しながら女性を安心させた。

 病院は2019年12月、内密出産を既に法制化したドイツを参考に独自に取り組むと公表した。その時から2年、女性は初事例となった10代の女性だ。

 博多駅で出会う約1カ月前の21年11月、女性が相談メールを寄せてきた。インターネットで内密出産に取り組む慈恵病院を知ったという。

 「親に妊娠を知られたくない」「自分では育てることができない」。子供の父親であるパートナーの男性に妊娠を告げると、…

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