- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要がある」――。放送法の「政治的公平」の解釈を巡り、第2次安倍政権下の首相官邸と総務省の間のやり取りが記された行政文書。今月、立憲民主党の国会議員が公表し、総務省も全文を開示した2014~15年の内部文書によると、礒崎陽輔首相補佐官(当時)はそう言ったという。その「けしからん番組」として名指しされたのが、TBS系報道番組の「サンデーモーニング」。番組にレギュラー出演するコメンテーターでジャーナリストの青木理さんは、どう受け止めているのか。【金志尚】
「けしからん」発言は“勲章”
「これほど政権からにらまれて敵視されているというのは、権力を監視するメディアの仕事をちゃんと果たしてきた(番組の)勲章でもあると思います」。文書にあった礒崎氏の「けしからん発言」について尋ねると、青木さんは淡々とした口調で答えた。
サンデーモーニングは1987年に始まり、30年以上続く長寿番組。タレントの関口宏さんが司会を務め、毎週日曜の午前8時から約2時間生放送される。1週間のニュースを関口さんが数人のコメンテーターとともに振り返るスタイルで、青木さんは15年9月から出演している。
放送法は第4条で放送事業者に「政治的に公平であること」を求めている。この条文について政府は従来、「一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体で判断する」との解釈を取ってきた。文書を見ると、14年11月に「サンデーモーニング」の放送内容に礒崎氏が強い不満を持ったことを発端に、安倍晋三首相(当時)の意向もあって官邸側が、一つの番組で判断できるように事実上の解釈変更を総務省に迫り、押し切った様子が分かる。こうした経緯に沿うように、15年5月には、高市早苗総務相(当時)が「一つの番組のみでも極端な場合は、一般論として政治的公平を確保しているとは認められない」と国会で答弁している。
この文書は、立憲民主党の小西洋之参院議員が今月2日に公表。総務省も7日、全て同省の「行政文書」だと認めた。ただ、松本剛明総務相は一部の内容について「正確性が確認できないもの」などがあるとしており、高市氏は自身について書かれた内容は「捏造(ねつぞう)だ」と主張した。
元首相補佐官の発言は「論外」
その文書によると、礒崎氏はサンデーモーニングについて「コメンテーター全員が同じことを述べているなど、明らかにおかしい」などとして偏っていると指摘。15年3月には、「番組の路線と合わないゲストを呼ばない。あんなのが(番組として)成り立つのはおかしい。総務省もウオッチしておかなきゃだめだろう」と同省幹部らに主張し、「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要があるだろう」と述べた。
文書に目を通した青木さんは一連の発言について、「論外です」と断じる。「実際、表現の自由を保障して検閲を禁じた憲法との関係もあり、(総務省は)ある程度、自制的に『放送事業者の番組全体で判断する』と放送法を解釈してきた面もあったのではないでしょうか。しかし、一つの番組でも場合によっては『取り締まる』ということになれば、明らかに政治権力による表現や報道への介入であり、まさに検閲です」
ジャーナリズムが「死ぬ」
政権とメディアの関係といえば、安倍政権時代に、自民党の萩生田光一筆頭副幹事長(当時)が14年11月20日、在京のテレビ6局に「公平中立、かつ公正」な選挙報道を求める要請文を渡したことが思い出される。
その2日前、衆院解散を表明した安倍首相がTBS系報道番組「NEWS23」に生出演し…
この記事は有料記事です。
残り1994文字(全文3475文字)