特集

新型コロナウイルス

新型コロナウイルスのニュース、国内での感染状況を報告します。

特集一覧

コロナ一律隔離でいいのか 生活不活発病リスク対応を DMAT次長

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
北海道内の保健所で支援方針について説明するDMAT事務局の近藤久禎次長(中央)=同事務局提供
北海道内の保健所で支援方針について説明するDMAT事務局の近藤久禎次長(中央)=同事務局提供

 新型コロナウイルス感染症によるクラスター(感染者集団)が発生した全国の病院や高齢者施設を緊急支援してきた災害派遣医療チーム(DMAT)が、その経験から警告を発している。「高齢者はコロナ肺炎より生活不活発病のリスクが高い。陽性判定や濃厚接触認定によって一律に隔離するのはやめるべきだ」という。今年5月に予定される5類移行に向けての医療体制を考えるうえで貴重な指摘といえる。組織の指揮をしてきた国立病院機構本部DMAT事務局の近藤久禎次長(52)に話を聞いた。【専門編集委員・滝野隆浩】

感染拡大防止か医療提供か

 ――2020年2月、横浜港に停泊中のダイヤモンド・プリンセス号の新型コロナ感染者の大規模対処では、船内の活動を近藤さんが仕切りましたね。あれから丸3年がたちます。

 ◆もともと感染症が「災害」かどうか、その対応がわれわれDMATの任務であるかどうか、微妙でした。ところが、ダイヤモンド・プリンセス号の事案の前、20年1月30日に故・安倍晋三元首相にいきなり、中国・武漢からの帰国者対応に「災害派遣医療チームの仕組みを活用する」と言われて動き出していました。以後、クラスターが出るたびに派遣要請があり、全国を飛び回ってきました。派遣先の病院や施設は550になりました。

 ――患者や医療者、スタッフまで感染が広がり、大混乱の現場に入り続けたのですよね。どんなことを感じましたか。

 ◆本来、DMATの目標は「医療体制の確立」です。つまり、大災害などで破綻したその地域の医療体制を復旧すること。その観点でいえば、現場では「感染拡大防止」と「医療提供」のどちらを優先させるか。考え続けていました

 ――どういうことですか。

 ◆感染症対策を徹底しすぎて陽性者や濃厚接触者を一律に隔離したらコロナ病床や隔離施設はすぐ埋まってしまう。また濃厚接触者となった病院・施設のスタッフを全員休ませていたら、医療はストップしてしまう。だから、「感染のリスク」で入院させるのではなく、「治療の必要性」をきちんと判断して入院させようと。あるいは高齢者の施設では陽性、濃厚接触であったとしてもそのまま留め置くべきだ。コロナ感染が拡大した20年の早い段階からそう考えていたのですが、さすがに新規の感染症でもあり、簡単ではありませんでした。

 ――患者もスタッフもほとんど、陽性か濃厚接触者という病院もありました。

 ◆当初は、新型コロナに対する恐怖がまずあり、現場が大混乱する。すると、そこにいる患者、入所者、あるいは中で働く医療者、職員に対する差別が起き、それが恐怖を増幅させていく。「A恐怖→B混乱→C差別→A恐怖……」という「負のサイクル」ができあがっていました。これは、私も現場に入った11年の福島第1原発事故のときとまったく同じパターンです。見えない放射線への恐怖から現場が大混乱し、差別が起きた。そうして救えた命が救えないという悲惨な状況を招いてしまった。「放射線」が「コロナ感…

この記事は有料記事です。

残り3259文字(全文4488文字)

【新型コロナウイルス】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集