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宗教と子ども

親の信仰の影響を受けて育った多くの「宗教2世」たちが声を上げ始めています。

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「げんせのバカバカ」消えぬ教団の記憶、家族再会に喜びも

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オウム真理教から一時保護された子どもの日記。「げんせのバカバカゆうかいはんにんけいさつだー」とつづった=山梨県の開示資料より
オウム真理教から一時保護された子どもの日記。「げんせのバカバカゆうかいはんにんけいさつだー」とつづった=山梨県の開示資料より

 1995年3月の地下鉄サリン事件後、オウム真理教の施設にいた100人以上の子どもが全国の児童相談所に一時保護された。学校に通わず、特異な教義の下で集団生活していた子どもたちに、児相はどう対応したのか。最多の53人を一時保護した山梨県の記録などから、その実態に迫る。

 この連載は全3回です。
 このほかのラインアップは次の通りです。
第1回 「これって誘拐?」保護された53人の子ども 教祖を神格化
第2回 「カビ生えたまんじゅうも食べた」過酷な修行 両脚縛られる罰も

ドキュメント「オウムの子」(3)

 一時保護されていた期間中、子どもたちの様子はどのように変化したのだろうか。ある児童がつづった日記から探ってみたい。

 表紙に「にっきちょう」と書かれた学習ノート。その記述は、児相に入所後約1カ月がたった5月15日から始まる。この日、テレビや新聞の閲覧が解禁され、子どもたちは「通常日課」として午前は学習や作文、夜は日記を書くようになった。

 「あいうえおかきくけこ……」。1ページ目はひらがなの練習とみられ、あどけない文字が並ぶ。続いてカタカナの練習。「ひらがなはOK、カタカナはみないと書けません」と職員のコメントがある。

 読み進めると、唐突にこんな記述が出てくる。「げんせのバカバカゆうかいはんにんけいさつだー」

 「げんせ」は現世のことだろう。オウムでは現世は超越すべきもの、警察はオウムを弾圧する「敵」だと教えられていた。一時保護された際に「誘拐された」と思い込み、児相職員に敵意を示す子も少なくなかった。

楽しみと規律を教える

 職員は辛抱強く、優しく子どもに接した。日記に対する職員のコメント。「よくかけています。でも、たのしいこともかいてね。パズルはどうでしたか?」

 5月19日。身近な題材を使ってカタカナの練習。「ミカン」「センタク」「ケ…

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