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作新学院の小針崇宏監督(39)は2006年秋の就任以降、選手に本気でぶつかり、さまざまな変化を重ねて歩みを進めてきた。09年にはチームを31年ぶりの夏の甲子園に導き、16年には悲願の全国制覇も果たした。17年間の歩みについて、小針監督に聞いた。【玉井滉大】
「自分の野球とは何か」を模索
――23歳での就任。当時の思いを教えてください。
◆当時は監督ができる指導力も知識もありませんでした。学校から指名を受け、戸惑いもありましたが、断るとか考えさせてほしいなどと言う余裕はありませんでした。フレッシュさを出しながら何かを変えることを期待されていたと思いますが、何を変えればいいのかという難しさはありました。
――難しさがある中で、就任当初からチームに対していろいろな変化を求めていきました。
◆経験がないからできたのかなと思います。当時の選手には申し訳ないですが、一年一年、一日一日選手とともに汗をかき、勉強しながら経験しながら今があるという感じです。チーム作りに自分の色を出すことを意識し、「自分の野球とは何か」を模索していました。今もそうですが、知識を教えたり野球を指導したりというより「一緒に戦う」「ともに学び、ともに成長する」ことの方が大事なのかなと思っています。
――就任当初の卒業生は、野球以外の部分が大きく変わったと話していました。
◆自分としては試合で勝つための練習でないと本番に強くならないので、グラウンドの上での厳しさ、勝負に対する気持ちや意識をしつこく伝えていました。試合で選手を困らせたり、不安げにさせたりしたらいけないと思っており、今もそういう姿が出てしまったら僕の負けかなと思って指導をしています。
――実際に指導してみて、自身に変化はありましたか。
◆最初の3年間は「自分が勝ちたい」でやってきましたが、5年目ごろから「頑張ってきた選手を勝たせたい」「甲子園に行かせたい」という思いが強くなりました。
――心境が変化した理由は。
◆11年に東日本大震災があり、野球ができるのは当たり前ではなく、いろいろな支えがあってのことだと気付きました。震災で大変な思いをされている方のことを考えると、「甲子園に行かないと」という自分の思い、悩みは小さなもので、好きなことができているじゃないかと。ありがたみを感じ、視野が広がった気がします。
監督の監督は選手
――厳しく、時には涙を流しながら、強い思いを持って選手に接する理由は。
◆野球が好きだからというのもありますが、作新でレギュラーになり、甲子園で優勝するという高い意識を持って入学してくれる選手に応えていかないといけません。その目標を実現するために、本気で接します。一方で甲子園で優勝することは目標であり、高校野球の目的は人生をしっかりと歩んでいくための基礎作りだと思っています。いろんな頑張り方、数学でいう「計算の仕方」を学んでいこうという部分を大切にしています。
野球を通して伝えたいのは、歯を食いしばり、本気で一生懸命やるのは、かっこいいんだよということ。また、作新の野球を見て少しでも元気や勇気が出る人もいるかもしれません。選手は自分のためにやっていますが、高校野球をやる意味はそういうところにもあるということも伝えたいですね。
――小針監督にとって選手とはどんな存在ですか。
◆宝物です。あとは少しくさいけど、自分の師ですよね。監督の監督は選手です。これは「甲子園塾」でも教わりましたし、実際に感じてきました。選手が野球を通して成長してくれるのは、こんなにうれしいことはないです。選手にも「監督は肩書きだけだから。俺はお前たちと一緒に野球をやっている仲間で、勝利という同じ目標があるから厳しく言うんだ」と言っています。
――17年間を振り返ると、全国制覇も果たし、自身も大きく変化されました。
◆暗い中を突き進んできたような感じがしますが、監督としては勝負勘や選手育成法など、まだまだ勉強しないといけないという思いが一番にあります。
選手は常に18歳で自分だけが年を取り、今年で40歳になります。差は広がっていくので、間を埋めるものは増えないといけません。それを埋められる若さでいたいですが、若さでカバーできないところは優しさと厳しさのバランスや、本音をさらけ出したり、演じたりするときもあります。このあたりは変わってきたところですかね。変化、失敗を恐れずというところは自分としてもテーマです。
練習は監督が作る 試合は選手が作る
――逆に、変えていないものは。
◆作新野球部を愛されるチームにしないといけないという部分ですかね。たとえ勝てなくても、弱くても、という部分はありますが、「勝てなくてもいい」というのはなかなか許されないところだと思うので、レベルを上げていこうという緊張感は常に持っています。選手にもよく言いますが、弱くなるのはすぐですし、試合で負けるのは簡単です。一日一日、勝つ難しさを考え、強くなる方向に物事を進めていく必要があります。
そのために何をやるかというところは少しずつ変わってきていると思います。選手が違えば練習法もチームの雰囲気も変わります。自分の野球を続けていくというより、進化していく。毎年新しい挑戦をしたいという意識はずっと持っていますし、似ているようで同じではありません。
選手たちにもよく言いますが、チームを強くする教科書はありません。勝ち方は無限にあると信じてやっていますし、それが(野球の)「やってみないと分からない」ということだと思います。勝つためにどうすればいいかを選手と一緒に考えて取り組んでいます。
練習は監督が作りますが、試合は選手が作ってほしい。練習で「手抜き工事」をしていては、本番で強い風が吹くと崩れてしまいます。そうならないように、選手本人に考えさせてプレーすることに重点を置いています。野球は一球一球に結果が出て、その積み重ねです。結果への「なぜ」を大事にしていこうと伝えています。
就任17年目を迎えた小針監督の歩みや作新学院の変化に迫る連載(全26回)は、毎日新聞デジタルでお読みいただけます。
「覚悟-小針監督・17年間の軌跡」
――17年間で、特に印象に残っている選手はいますか。
◆自覚を持ってから大きく変化した佐藤竜一郎(11年の3番打者)や、常に感謝の気持ちを口にしてくれた山本拳輝(16年の全国…
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