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公文書は政策などの決定過程を記録した歴史資料だ。閣僚でありながら、その内容を否定する強弁を、いつまで続けるつもりなのだろうか。
放送法の「政治的公平」を巡る第2次安倍晋三政権の行政文書を、「捏造(ねつぞう)」と決めつけてきた高市早苗・経済安全保障担当相の態度である。当時、放送行政を所管する総務相を務めていた。
文書に記された2015年2月13日の「高市大臣レク(説明)」について、総務省が「あった可能性が高い」との見解を示した。文書はレクの際に職員が作成し、省内で共有されていた。
しかし、高市氏は「この時期に放送法の政治的公平について話した事実がない」と否定し、内容が「不正確だ」と主張している。
「私が言うはずもないことがたくさん書かれている」のがその根拠だという。文書が事実なら閣僚や議員を辞職する考えを示してきたが、レクがなかったとの主張を裏付ける日程表などは見つかっていない。
総務省の文書は発言者に内容を確認していないため、受け止め方が異なる場合もあろう。だが、内閣府は「行政文書に該当するかは、確認の有無で左右されない」との見解を示している。
閣僚は各行政機関のトップとして行政文書を管理する責任者だ。それを尊重する立場にある。
にもかかわらず、高市氏は総務省が「悪意を持って捏造」したと述べ、NHK改革に関する「私の態度が気に食わなかったのだろう」と感情をあらわにしている。
公文書や官僚への信頼を自らおとしめる言動である。閣僚としての資質を疑わざるを得ない。
そもそも問題の本質は、政府による「政治的公平」の判断に関する解釈変更がどのように行われたかだ。文書には安倍氏の意向を踏まえ、当時の礒崎陽輔首相補佐官が働きかけた詳細が記される。
高市氏には真相解明に取り組むことが求められるが、自らの主張に固執して時間を空費している。
岸田文雄首相は「総務省から説明しなければならない」と語り、まるで人ごとのようだ。行政全体の信用に関わる深刻な事態である。行政府の長として国民の不信を拭う責任がある。