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愛せない“普通”じゃなくても良い母に=生野由佳(デジタル報道センター)

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「母性にこだわらなくても良い母親にはなれるはず」と語る優さん(仮名)=2023年2月24日、生野由佳撮影
「母性にこだわらなくても良い母親にはなれるはず」と語る優さん(仮名)=2023年2月24日、生野由佳撮影

 予期せぬ妊娠で、長女心葉さん(仮名、6歳)を出産したものの、「母性が湧かない」と苦しんだ東北地方在住の会社員、優さん(仮名、37歳)。でも、本当は心当たりがあった。

 前編<母性がなくても~母の覚悟

「母親に愛されなかった」

 5人兄妹の2番目。専業主婦の母親と、仕事人間の父親。切り詰めた生活で我慢ばかりの毎日だった。

 母親は自分を愛するというより、自分を教育する存在。兄妹に一切の反論を許さなかった。存在を否定されていると感じて「生まれてこなくてよかった」とさえ思っていた。

 小学生の間、習い事は決められた運動系だけ。門限に遅れると竹刀でお尻をたたかれた。大好きな漫画は買ってはいけない。

 こだわりが強かった優さんは人一倍、反発した。目標は「一日でも早く家を出る」。

 今振り返れば、と優さんは思う。

 「母親も母親なりに子育てに必死だったのだと思います。5人も子どもがいて、厳しく接して統率していくしかなかったのでしょう」

 大人になってかつての不満をぶつけた優さんに、母親は言った。「私なりに愛情を持って、精いっぱい育てたわよ。あの頃はただただ必死だったの……」

 だけど、優さんは「母親に愛された記憶が全くないんです」と言い切る。「そんな私が子どもを愛せるとは思いませんでした」

出産、苦しんだ「同調圧力」

 短大卒業後、東京でファッション誌や漫画の編集者にな…

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