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自らが体験した地獄の旅 ウクライナと重ね 漫画家・ちばてつやさん

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「焼け野原になった都市には灰の白、焼け落ちた建物の黒しかありませんでした」。漫画家のちばてつやさんは、終戦後に見た日本の風景をそう語る=東京都練馬区で2023年3月11日、宮本明登撮影
「焼け野原になった都市には灰の白、焼け落ちた建物の黒しかありませんでした」。漫画家のちばてつやさんは、終戦後に見た日本の風景をそう語る=東京都練馬区で2023年3月11日、宮本明登撮影

 ロシアのウクライナ侵攻から1年が過ぎた。戦火がやまぬ中、多くの人々の命が奪われた。「あしたのジョー」などの名作で知られる漫画家のちばてつやさん(84)は、爆撃から逃げ惑うウクライナの人々の姿に、旧満州(現中国東北部)から日本に引き揚げてきた自らの子ども時代を重ねる。池上彰さんとの対談では、戦争の悲惨さなどについて語り合った。【構成・瀬尾忠義】

78年前の戦争と同じ事の繰り返し

 池上 「銀河鉄道999」などを描いた漫画家の松本零士さんが2月に亡くなりました。松本さんが1歳年上でしたね。

 ちば 漫画家の中で一番お付き合いが長い友人でした。1957(昭和32)年に夜汽車に乗って上京した松本さんは、出版社に手配された旅館にやってきました。そこで私と偶然出会ったのです。私は漫画家になったばかりで、先輩の仕事を手伝うために同じ旅館で缶詰めになっていたのです。この出会いからのお付き合いになります。

 池上 松本さんとちばさんの作風は違いますが、刺激し合っていたのですか。

 ちば 松本さんから持ち込んだ漫画をちらっと見せてもらいました。その時に感じたのは、私と1歳違いなのにこれはかなわないな、と。絵柄が全く違います。松本さんの描く絵はファンタスティックでしたし、女性はミステリアスで色っぽい。自分にはないものをいっぱい表現されていたので、それはカルチャーショックでしたよ。

 池上 東京・上野の寛永寺で3月9日に行われた「東京大空襲慰霊祭」に出席されたのですね。

 ちば 毎年参加していたのですが、新型コロナウイルス禍で3年ぶりに行われました。(初代林家三平さんの妻の)海老名香葉子さんの主催です。内々で集まるのかなと思っていたのですが。

 池上 ちばさんのブログの写真を拝見すると、大勢の方が集まったのですね。

 ちば 地元の幼稚園や朝鮮学校の子どもたちも参加してくれました。慰霊祭では海老名さんが作詞した「ババちゃまたちは伝えます」という歌をみんなで大合唱しました。彼女は「自分たちは戦争でこんな目に遭った。つらい時代だった」ということを多くの人々に伝える使命感を持っています。海老名さんは東京大空襲で家族6人を亡くし、自分と1人の兄しか生き残らなかった。住んでいた家も、通っていた小学校も、何もかも空襲で焼け野原になってしまい家族の遺骨も見つからない。だからお墓を作れないし、戦後補償もなかったとお聞きしました。毎年、自分の家族が亡くなったと思う場所に花を手向けてきました。そして「空襲で命を奪われた人はたくさんいる。自分だけの問題ではない」と声を上げる決意をしたのです。東京都に掛け合ったのですが動いてくれない。そうしたら見かねた寛…

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