夢とリスクのはざまで 女子初のフライングヒル巡り異例の対応
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ノルディックスキー・ジャンプ女子で200メートルもの飛距離を争う初めての大会を巡り、異例の対応があった。当初は出場条件を満たせなかった伊藤有希選手(28)=土屋ホーム=が一転、日本勢でただ一人参加できることになった。男子と同じ舞台に立ちたい選手の夢と、競技人生を左右しかねないけがのリスクが絡み合っていた。
「Let Yuki Fly(有希を飛ばせて)」。そんなハッシュタグがSNS(ネット交流サービス)に躍ったのは16日ごろからだった。ファンや日本選手、海外のトップ選手らも賛同した。
波紋を呼んだのは、19日にノルウェーのビケルスン(ヒルサイズ=HS240メートル)で開かれるフライングヒルの初の女子大会に向けた出場権争いだ。フライングヒルは130メートル前後で行われることが多いラージヒルより、はるかにジャンプ台の規模が大きい。
出場できるのは15人。欧州各地で行われている今冬のワールドカップ(W杯)のうち、ノルウェー国内を3月に転戦する「ロー・エアー」と呼ばれる試合の予選と本選で、15日までに飛んだ8本の合計得点で15位以内に入ることが条件だった。
伊藤選手は15日の試合で1回目を飛んだ後、規定時間以内にスタートできていなかったとして失格。その試合は0点となり、「ロー・エアー」のランキングは5位から20位に落ちた。
15位だったオーストリア選手が出場を辞退し、フライングヒルの大会は14人で争われるはずだった。だが、国際スキー連盟の公式サイトによると、各国のコーチが伊藤選手の出場に賛同。結果的に参加が認められ、15人でフライングヒルに臨むことになった。
伊藤選手は「オリンピックの金メダルと同じくらい私の競技人生をかけた夢は、自分の力ではあと一歩のところで遠のいてしまいましたが、皆様が再び夢を与えてくださいました。ありったけの感謝の気持ちと共に飛ばせていただきます」などとSNSにつづった。
フライングヒルは助走や空中でのスピードが速く、高い技術が必要となる。ファンや関係者の間で「女子で飛べるのは誰か」と話題になると、真っ先に名前が挙がる一人が伊藤選手だった。安定した飛型と着地技術の高さを持つことが「超法規的措置」による繰り上げにつながったとみられる。高梨沙羅選手(26)=クラレ=は左脚のけがにより選考対象の8本中4本しか飛んでおらず、ランキングは34位だった。
女子選手には「夢」
女子選手に聞くと、フライングヒルは「夢」だという。「この大会ができる前から、一生に一度はフライングを飛びたいと思っていた」と語るのは、W杯出場経験があり、世界ジュニア選手権で団体銅メダルを獲得したこともある渡辺陽(みなみ)選手(25…
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