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家電売り場で目立つようになった高級オーブントースター。各社が焼き方やデザインを追求し、価格は軒並み2万円を超える。いち早く製品を投入した「アラジン」は年69万台を売り上げる主要ブランドに成長したが、手掛けているのは大手の下請けとして始まった企業だ。「こんなに高いトースターが売れるわけがない」。そんな前評判をどうやって覆したのか。
始まりは大手の2次下請け
丸みを帯びたレトロなデザインに薄緑などの落ち着いた色味――。ランプをトレードマークとするアラジンのトースターは、外観も印象的だ。特許技術でパンの中の水分が蒸発する前に表面が焼き上がり、「外カリ、中モチ」を宣伝文句とする。直販サイトでは、食パンを同時に4枚焼ける代表的な機種を2万2000円で扱っている。
製造している企業は兵庫県加西市に本社を構える千石。従業員は三百数十人で、2022年11月期の売上高は215億円だった。かつて家電大手の一角を占めた三洋電機の2次下請けとして、1953年に創業。ダイキン工業や松下電器産業(現パナソニックホールディングス)といった他の大手の注文も受けて、今も暖房器具や調理家電のOEM(相手先ブランドによる受託生産)を担う。
下請けやOEMの割合が高い企業は、発注する側の動向によって業績が左右されやすい。取引先頼みから脱却しようと、千石は90年代から自社ブランドで廉価な石油ストーブを製造していたが、大手に匹敵するほどのブランドに育てるのは容易ではなかった。
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