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Nの記録・警察庁長官狙撃事件

警察庁長官狙撃事件の捜査本部内で「N」と呼ばれた中村泰受刑者。入手した特命捜査班の「Nの捜査記録」や証言から事件を検証。

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Nの記録・警察庁長官狙撃事件

「オウム信者犯行説」に固執した公安部 修正できなかった理由

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2009年10月5日に開かれた検討会で、青木五郎・警視庁公安部長(当時)が「中村泰に対する捜査は、立件すれば、逮捕・起訴・有罪判決が可能」などと発言したことが記されている=Nの捜査記録から、長谷川直亮撮影(画像の一部を加工しています)
2009年10月5日に開かれた検討会で、青木五郎・警視庁公安部長(当時)が「中村泰に対する捜査は、立件すれば、逮捕・起訴・有罪判決が可能」などと発言したことが記されている=Nの捜査記録から、長谷川直亮撮影(画像の一部を加工しています)

 1995年3月に起きた警察庁長官狙撃事件の時効まで約半年に迫った2009年10月5日。現金輸送車襲撃事件で無期懲役が確定した中村泰(ひろし)受刑者(92)の関与を調べる警視庁の特命捜査班のもとを青木五郎公安部長(当時)ら捜査本部の幹部が訪れ、名字のイニシャルからNと呼ばれた受刑者の犯人性を検討する会議が開かれた。毎日新聞が入手した「Nの捜査記録」には、会議の要旨がA4判1枚で残されている。

 この連載は全3回です。
 このほかのラインアップは次の通りです。
第1回 警察庁長官狙撃事件 900ページの捜査文書入手 新証言と矛盾も
第3回 独り歩きした犯人像 捜査混乱させた「身長180センチ」

 それによると、青木氏は訓示として「中村に対する捜査は、立件すれば、逮捕・起訴・有罪判決が可能であり、事件解決ということにもなる。中村は犯行を自認し、その部分部分の裏付けも取れて証拠品もある。しかし、私は動機の部分を含め供述には納得できない部分がある」と述べ、オウム真理教と接点がない受刑者の「自白」に疑問を投げかけた。そして、教団によるテロの可能性に言及した上で、次のように訓示を結んだ。

 「オウム真理教という確固たる証拠があるならば中村の捜査をやめるが、それがない。(中村受刑者の)立件を目指す捜査は困るが、さらに捜査を突き詰めていただきたい」

 この会議に出席した複数の元捜査員は取材に、青木氏が実際にこうした発言をしたと証言した。元捜査員の一人は「教団と無関係…

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