特集

第95回センバツ高校野球

第95回選抜高校野球大会(2023年)の特集サイトです。

特集一覧

龍谷大平安「あやしい曲」誕生秘話 重低音のチャンテ センバツ

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
「あやしい曲」を演奏する龍谷大平安の吹奏楽部員たち=京都市下京区で2023年3月4日午前11時58分、下河辺果歩撮影 拡大
「あやしい曲」を演奏する龍谷大平安の吹奏楽部員たち=京都市下京区で2023年3月4日午前11時58分、下河辺果歩撮影

 高校野球ファンに根強い人気を誇る応援曲が「威圧感すごい」「甲子園の空気を平安ムードにする」などとネット交流サービス(SNS)でも話題になった。開催中の第95回記念選抜高校野球大会に出場する龍谷大平安(京都)は攻撃でチャンスを迎えた時、アルプスから「あやしい曲」「怪しいボレロ」などと呼ばれる応援曲が奏でられる。球場を包み込むような迫力のある重低音が特徴のチャンステーマは、どのようにして誕生したのだろうか。

 曲ができたのは、龍谷大平安が1990年夏以来となる甲子園出場を決めた97年。当時から吹奏楽部の顧問を務める林晃教諭によると、久しぶりの出場だったことに加え、当時から強豪校は独自の応援曲を持っていることが多かったため、「うちも何かあればね」という話が部員との間で持ち上がったという。

龍谷大平安の吹奏楽部で顧問を約30年務める林晃教諭=京都市下京区で2023年3月4日午前11時46分、下河辺果歩撮影 拡大
龍谷大平安の吹奏楽部で顧問を約30年務める林晃教諭=京都市下京区で2023年3月4日午前11時46分、下河辺果歩撮影

 「相手を威圧できるような曲」をイメージし、生徒が中心になってメロディーを作った。97年センバツで初めて演奏して以降、少しずつ改良を重ねながら今の形に落ち着いたという。

 林教諭に曲名の由来を尋ねると、こんな裏話を明かしてくれた。元々は曲名はつけておらず、吹奏楽部では演奏する順番などの理由から「B」と呼んでいた。

 しかし、甲子園のアルプスで演奏中に曲名の取材を受けた際、曲調から「この曲あやしいしなあ」と部員が話し、とっさに答えたのが「あやしい曲」だった。これが世間に浸透し、リズムがボレロに似ていることから「怪しいボレロ」と呼ばれることも増えた。

 曲が生まれた97年、野球部主将とエースを担ったのは、後にプロ野球・オリックスに進んだ川口知哉さん。2022年春から龍谷大平安でコーチを務める川口さんも「あやしい曲」を愛してやまない一人だ。

龍谷大平安の原田英彦監督(左)と川口知哉コーチ=京都市伏見区で2023年2月3日午後5時7分、下河辺果歩撮影 拡大
龍谷大平安の原田英彦監督(左)と川口知哉コーチ=京都市伏見区で2023年2月3日午後5時7分、下河辺果歩撮影

 吹奏楽部が新曲の制作に動き出した当時、実は川口さんも同じ思いを抱いていた。「周りが口ずさめて、この曲イコール平安と言われるような曲を作ってほしい」と同級生の生徒会長に頼んだという。

 初めて曲を聴いた時は「入りの重低音がぞわっとした」と感動した。強力な応援曲を背にマウンドに立ち、97年夏の甲子園ではチームを準優勝に導いた。思い入れがあり、今でもユーチューブで聴いて感傷に浸ることがある。

 作曲した吹奏楽部や川口さんが思い描いたように、今ではすっかり「龍谷大平安といえば」と親しまれる名曲になった。

 声出し応援が解禁された今年のセンバツ。龍谷大平安は4年ぶり出場で、21日にあった長崎日大との初戦では攻撃のチャンスで披露された。吹奏楽部の柊佑果(ひいらぎ・ゆうか)部長は「こんなに広い場所で演奏するのは初めて。とても幸せです」と感激した様子だった。

 スタンドには系列の龍谷大平安中の生徒と合わせて約120人の吹奏楽部員が集まり、スタンドを盛り上げた。柊部長は金管楽器のユーフォニアムを担当し、主旋律を奏でた。「屋外の演奏で勢いが必要。とにかく周囲と息を合わせて演奏しています」と集中していた。迫力たっぷりの音色が甲子園に響き、後押しを受けたチームは逆転勝ちした。

 龍谷大平安は第9日の3回戦で、昨夏の甲子園で東北勢初優勝を果たした仙台育英(宮城)と対戦する。【下河辺果歩】

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

最新写真

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月

ニュース特集