タイブレーク増える？　延長十回から戦い方に変化が　センバツ

　阪神甲子園球場で開催中の第95回記念選抜高校野球大会で、21日に史上初となる延長十回からのタイブレークで決着する試合があった。「夏春連覇」を狙う仙台育英（宮城）が裏の攻撃で、慶応（神奈川）に2―1でサヨナラ勝ちした。延長十三回から十回に開始が早まったため、今大会はタイブレークの試合が増えると予想される。勝った仙台育英だけでなく、慶応も入念に準備して大会に臨んでいた。

　仙台育英の須江航監督は1点差の競り合いとなった中盤過ぎから、「控え選手を呼んで準備させた」。終盤勝負、さらにはタイブレーク突入を予想したという。「僕らは打てるチームじゃないので、最後の3日間は徹底的に練習した」と明かし、「表のパターンと裏のパターンで、表だったらアグレッシブに2点以上取る野球をするし、裏だったら表の失点の中で求められる点数に対する野球をする。ケースに応じて詰めてやった」と強調した。

　この試合では十回表の守備でゼロに抑えたことで、裏の攻撃では1点を取ることに集中した。先頭打者が送りバントを成功させ、理想的な1死二、三塁の状況を作った。

　慶応は今年に入ってからタイブレークの練習を増やした。投内連係の守備練習の最後には必ず、タイブレークを想定して「1点も取らせない場合の守備練習」を繰り返した。この試合では1死満塁のピンチで、福井直睦左翼手（3年）が「レフトゴロ」と記録される珍しいプレーで、サヨナラの危機を防いだ。「練習が生きた」と福井選手。極限の緊張感の中でファインプレーが生まれたのは、日ごろの準備のたまものだった。

　大会前、他の監督はどう考えていたのか。昨秋の近畿大会で準優勝した報徳学園（兵庫）の大角健二監督は「いい投手相手だと、ゲーム展開によってはタイブレークまで何とか持ち込もう、という考えも増えるんじゃないか」と指摘する。さらに、「（タイブレークの攻撃が始まる）無死一、二塁の守り方ですよね。そのケースの練習を増やしている」と説明した。

　昨秋の近畿大会で8強入りした履正社（大阪）の多田晃監督は対策について「企業秘密なんですけど（笑い）」としつつ、「野球のやり方が大きく変わる」と明かす。対策については「攻撃より守備。無得点だった時にいかに点をやらないか。例えば、バント処理上手な投手を置いておいたほうがいいかな、とか。制球が不安定な投手しか残っていないと嫌だな、とか。裏を守り切れたら、流れはこっちに一気に来るしね。しかも、場所は甲子園。普段以上にしびれる」と想定していた。

　前回王者である大阪桐蔭の西谷浩一監督は「機会は増えると思うが、タイブレークになる前に決着をつけたい」。得点が入りやすく、打順の並びなどの運の要素もあるタイブレーク突入までに、試合を決着させたい考えだ。ただ、練習試合ではタイブレークの対策も行っていた。

　今大会12試合目にして初めてタイブレークに突入したが、前回は延長戦が計7試合あった。果たして今大会はどうなるか――。【大東祐紀】

センバツのタイブレーク

　同点の場合に延長十回無死一、二塁から攻撃を始める制度。投手らの負担軽減が目的。2018年の第90回記念選抜高校野球大会から導入されたが、当初は延長十三回からだった。しかし、今大会からさらなる負担軽減のため、得点が入りやすくなる延長十回からに早まった。打順は前の回から続く「継続打順」で始める。