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チャットGPTは「サイボーグ」 AI利用小説が文学賞に入選

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木の下でくつろぎながら、空を眺める葦沢かもめさんのアイコン=葦沢さん提供
木の下でくつろぎながら、空を眺める葦沢かもめさんのアイコン=葦沢さん提供

 「Chat GPT(チャットGPT)」に代表される対話型AI(人工知能)の進化は、インターネットの登場以来のインパクトとも言われている。AIを使った小説で、日本の文学賞に入選した男性はこの新技術を「人間の能力を拡張するサイボーグのようなもの」と表現する。【安藤龍朗】

執筆プログラムを自作

 2013年に創設された「星新一賞」(日本経済新聞社主催)は、農芸化学を学んだ理系作家の星新一にちなみ、理系的発想からうまれた短編作品を募集。AIなどを「斬新な発想やイノベーションを生み出すもの」と位置づけ、人間以外が執筆した作品も受け付けている。

 「葦沢かもめ」のペンネームで活動する男性は、「あなたはそこにいますか?」でAIを利用した作品として初めて、22年の一般部門優秀賞を受賞した。

 創作に使ったのは、米ベンチャー企業「オープンAI」が開発したAI「GPT―2」。プログラミングの知識がなくても自然な文章ができる「チャットGPT」の前身モデルにあたり、機能は劣る。普段、大量に蓄積されたデータを分析する「データサイエンティスト」として企業で働く葦沢さんが、パソコンで執筆プログラムを自作した。

AIとキャッチボール

 創作活動が14年目になるという葦沢さん。4回目の投稿となった22年の星新一賞には、受賞作を含め100点をエントリーした。一般部門の応募総数2022点の4・9%を占める数だ。

 大量投稿には理由があった。「いたずら心のようなもの」に加え、16年の入選作に「AIが星新一賞に大量投稿する未来」を描いた作品があったことだ。「SFのような遠い未来と思われていることが現実にできたら、おもしろいと思いました」

 就職するタイミングでプログラミングを学び始めたことから、趣味だった小説に「AIが使えたら」とも考えたという。

 執筆の流れはこうだ。

 アイデアをパソコンに入力し、GPT―2に文章を生成させ、流れなど不自然な点を点検する。

 「一つの文としては読めても、文章全体では違和感を感じる部分がありました。脈絡がないところをつなげるように、自分で整えました」

 不足を補う書き直しの指示や修正を繰り返し、最終点検をへて作品が完成する。できばえを自分で確認できる分量として1点あたり1000~2000字程度を目安にした。AIとキャッチボールを繰り返した全100点の創作期間は3週間ほどだったという。

 入力さえ済ませておけば、人間が別の仕事をしている時も、寝ている間でもAIは執筆を進めていく。「AI=作家、人間=編集者」の関係にも見える。

 チャットGPTの登場は米SF雑誌の投稿を休止に追い込みました。編集長は「世界中に注意喚起をしたい」と話しています。

どんどん文章ができる

 チャットGPTは、膨大な文書データを学習して自然な文章を生み出す能力を獲得していて、人間が書くような自然な文章を生成できる。「インターネットの登場以来のインパクトだ」と指摘する専門家もいる。

 22年11月に一般公開され、2カ月ほどでユーザー数は1億人に達した。葦沢さんも大きな衝撃を受けたという。「適切な質問ができれば、ど…

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