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「誰も勝てないモグラたたき」 SF誌にChatGPTの猛攻撃

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月刊誌「クラークスワールド・マガジン」のホームページ。ヒューゴー賞など有名なSF文学賞の受賞者を多数、輩出している
月刊誌「クラークスワールド・マガジン」のホームページ。ヒューゴー賞など有名なSF文学賞の受賞者を多数、輩出している

 米国のSF・ファンタジー月刊誌が投稿の受け付けを一時、停止した。原因は人工知能(AI)が書いた小説の激増だ。編集長は、こう警告する。「誰も勝つことができないモグラたたきのゲームが始まってしまった」【國枝すみれ】

「世界中の出版社に注意喚起したい」

 月刊誌「クラークスワールド・マガジン」は2006年創刊。一般投稿から選ばれた優れたSF短編作品などを掲載する。この中からヒューゴー賞など有名なSF文学賞受賞者を何人も輩出してきた。

 編集長で発行人のニール・クラーク氏(56)が「世界中の出版社に注意喚起したい」と、米国からオンライン取材に応じてくれた。開口一番、こう切り出した。

 「言わば迷惑(スパム)投稿です。迷惑メールに対応するように、スパムフィルターを作るしかないと考えています」

 AIが書いた文章を見破るプログラムはあるが、それをかいくぐるプログラムもある。増えるスパム投稿を見抜いて振り落とす作業に際限はない。

 これまでも盗作などの不正はあり、投稿の永久禁止などの対策を講じてきた。しかし、あるAIの登場で事態は一変した。

 米ベンチャー企業「オープンAI」が開発した対話型のAI「Chat GPT(チャットGPT)」だ。

 2022年11月、一般に無料公開されて爆発的にヒットし、ユーザー数は2カ月ほどで約1億人に達した。ディープラーニング(深層学習)を進めて、まるで人間が質問に答えるように文章を生成し、条件を設定すれば、歌詞や小説の創作もできる。

 世間の耳目を集めるこのAIを使い、あわよくば出版にこぎつけて小銭を稼ごうとする人間が現れた。あるインフルエンサーがブログや動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で、「手軽に金を稼ごう」と投稿。これが呼び水となり、AIを使った作品の投稿は22年12月の51件から、23年1月は116件に倍増した。

 日本ではAIを利用した小説が文学賞に入選しました。執筆者の男性を取材しました。

 「もうたくさんだ」。2月20日、クラーク氏は投稿の受け付けを取りやめた。この日、午前中だけでAI作品の猛攻撃は50件。2月は20日間で計512件にのぼった。

 雑誌は投稿で成り立っているため、いつまでも窓口を閉鎖しているわけにはいかない。いずれ再開する予定だが、クラーク氏はまた同じ問題が起き、再び中断すると予想する。

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