「でっち上げ」見逃し続けた裁判所 責任は重く 袴田事件再審確定

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2014年に釈放された際、古里の浜松市に到着し、記者会見で思い出などを語る袴田巌さん(中央)。右は姉の秀子さん=浜松市で2014年5月27日午後1時21分、竹内紀臣撮影
2014年に釈放された際、古里の浜松市に到着し、記者会見で思い出などを語る袴田巌さん(中央)。右は姉の秀子さん=浜松市で2014年5月27日午後1時21分、竹内紀臣撮影

 1966年6月に静岡市(旧静岡県清水市)で一家4人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定し、2014年3月に静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌さん(87)の再審請求で、東京高検は再審開始を認めた東京高裁差し戻し審決定について、最高裁への特別抗告を断念した。検察側が白旗を揚げたことで「開かずの扉」がようやく開いた。袴田さんの「無実の叫び」が届くまでの道のりを追った。

   ◇

 「『お前がやったんだろ』って言われても、やってないものを何て言えばいいの?」

 「でっち上げ。関係ないですよ。本当に」

 袴田さんは1966年8月18日、勤務先のみそ製造会社の専務一家4人を殺害した疑いで静岡県警の取り調べを受け、同日中に強盗殺人などの容疑で逮捕された。取り調べは約13時間に及び、うち約10時間分が再審請求審で検察側が弁護側に開示した取り調べの録音テープに含まれていた。そこには、関与を一貫して否定する袴田さんの肉声が残されていた。

 弁護団によると、録音テープは他に逮捕から起訴13日後までの約20日分あった。複数の警察官が交代で取り調べに当たる中、ひそかに録音したもので、自白を得ようと躍起になる様子には現在では違法と評価される場面が散見された。

 逮捕から4日後の8月22日。弁護人との接見が取調室で行われ、捜査員不在の中、袴田さんが「僕分からないですよ」などと相談する内容が録音されていた。9月4日には「小便に行きたい」と袴田さんが取り調べの中断を求めた後、取調官は便器を取調室に持ってくるよう同僚に指示。袴田さんがその場で用を足す音も収められていた。

 弁護人との自由な接見は本来、…

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