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第95回センバツ高校野球

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報徳学園コーチは元営業マン 練習改革で「業績」伸ばし センバツ

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山梨学院との決勝に敗れた直後、報徳学園の選手たちを見つめる宮崎翔コーチ=阪神甲子園球場で2023年4月1日午後2時20分、大野航太郎撮影 拡大
山梨学院との決勝に敗れた直後、報徳学園の選手たちを見つめる宮崎翔コーチ=阪神甲子園球場で2023年4月1日午後2時20分、大野航太郎撮影

 21年ぶりの春の頂点を狙った報徳学園の三塁側アルプス席。敗れた瞬間静まりかえり、すぐに温かい拍手が広がった。センバツ準優勝を陰で支えた同校OBの宮崎翔(つばさ)コーチ(36)は泣き笑いのような表情を浮かべ「よく頑張った」と選手をたたえた。

 「バッティング練習!」。隣で練習するラグビー部員に打球が当たるのを防ぐため、野球部員たちは高さ5メートルのフェンスを並べる。グラウンドの外ではシャドーピッチングをする投手たちの間を陸上部の選手が駆け抜ける。報徳学園の練習風景だ。春夏計3回の甲子園優勝を誇る名門野球部に専用グラウンドはない。

 しかも野球部員は今回のセンバツ出場校で最多の97人。「人口密度はトップクラス」と苦笑する宮崎さんは以前、大手保険会社の営業マンだった。2013年、恩師の永田裕治前監督からコーチにと誘われ、会社を辞めて母校に戻った。

 だがチームは18年の夏以降、甲子園から遠ざかった。宮崎さんは自動車保険の営業時代、データを生かして代理店の業績を伸ばした。21年秋、大人数で同じメニューに取り組みがちだった練習法の改革を大角(おおすみ)健二監督(42)に提案。体力測定や試合成績のデータから選手の能力を数値化し、レベルの近い約10人ごとの6班に振り分けた。

打撃練習の前に、ラグビー部の方向に打球が飛ばないようフェンスを並べる野球部員たち(奥)=兵庫県西宮市の報徳学園グラウンドで2023年3月8日午後3時11分、大野航太郎撮影 拡大
打撃練習の前に、ラグビー部の方向に打球が飛ばないようフェンスを並べる野球部員たち(奥)=兵庫県西宮市の報徳学園グラウンドで2023年3月8日午後3時11分、大野航太郎撮影

 練習は班ごとに行い、グラウンド内外の狭いスペースも無駄なく活用。打ったりノックを受けたりする待ち時間を大幅に縮め、密度を濃くした。一つでも上の班にはい上がろうと、競争も激しくなった。「数字で可視化すればやるべきことが明確になる。営業でも野球でも大切」と宮崎さん。ただしミスで減点しない。「業績の良い保険代理店は社員が失敗を気にせず、挑戦していた」

 そして臨んだ大舞台。チームは相次ぐ接戦をものにして勝ち上がり、宮崎さんは「手応えを感じる。夏の日本一を意識して、練習をもっと効率的にしていきたい」。大阪桐蔭との準決勝で3安打2打点と活躍した林純司選手(3年)は「数値には納得せざるを得ないが、悔しさは増す。見返してやるという気持ちでプレーできる」と話す。

 この日の決勝をアルプス席から懸命に応援した副主将の宮川叶亜(とあ)さん(3年)は「普段は競争している分、甲子園では部員一丸で戦えた。夏は自分が試合に出たい」と前を向いた。名門の挑戦は終わらない。【大野航太郎】

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