ウクライナ戦争を止めることができる? 元国連事務次長に聞く
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ロシアのウクライナ侵攻から1年が過ぎた。国連は侵攻も、今なお続く戦闘も止めることができない。常任理事国のロシアが拒否権を行使し、安全保障理事会が機能不全に陥っているからだ。世界の外交官にも名を知られ、国連を知り尽くす高須幸雄元国連事務次長は、拒否権の問題とともに、拒否権は世界が破滅的な事態に向かうのを防ぐ安全弁にもなっていると説明する。非常任理事国となった日本の果たすべき役割についても聞いた。【聞き手・矢野純一/オピニオングループ】
拒否権がネックだが…
――ウクライナの状況をめぐって、国連の限界が指摘されています。
◆国連はロシアのウクライナ侵略を止めることができず、その後も続く戦争をも止めることができていません。それだけでなく、北朝鮮の弾道ミサイル発射にも追加の制裁措置をとれていません。国連の機能不全と言われても仕方がない状況で、とても残念で由々しき事態です。
国連の第一の目的は、平和と安全の維持です。紛争の平和的解決という原則を破って平和の脅威となったり、破壊したりする国があれば、制裁を科して、必要であれば軍事的な対抗措置でこれを止める集団的安全保障制度を持っています。安全保障理事会が一義的にその責任を負っています。
しかし、ロシアの侵攻をめぐっては、昨年5月に深い懸念を表明する声明を出しただけで、何も「決定」ができていません。その代わりに、この1年で国連総会が六つの決議を採択しています。しかし、これも「勧告」にとどまっていて、拘束力を持ちません。
ロシアが国際社会で孤立しているのは間違いありません。しかし、強制的な措置が取れない状況です。対露制裁は、国連の枠組みの外で、主要7カ国(G7)や関心のある国が加わっているだけです。
――安保理の機能不全の原因は拒否権といわれていますが。
◆安保理の常任理事国が持つ拒否権がネックとなっています。紛争の平和的解決という原則を、常任理事国であるロシア自身が破ったため、強制的な措置を決定できなくなっています。
国連の安全保障制度は拒否権も含めて、第二次世界大戦の主要戦勝国の米英両国と当時のソ連が中心になって再び大きな戦争が起きないように交渉して作ったものです。仮に拒否権がなければ、安…
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