「私は産みたかった」遺棄罪に問われ 元実習生に妊娠許さぬ「圧力」
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熊本県芦北町で2020年11月、死産した双子の遺体を遺棄したとして死体遺棄罪に問われたベトナム人の元技能実習生、レー・ティ・トゥイ・リン被告(24)の上告審で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は24日、判決を言い渡す。懲役3月、執行猶予2年とした2審・福岡高裁判決が見直される可能性があり、支援者は期待を寄せる。一方、事件の背景には、実習生が置かれた厳しい現実が横たわる。
「私は産みたかったです」。22年4月、最高裁に上告趣意書を提出した日の記者会見でレー被告が力強く語った姿を、市民団体「コムスタカ―外国人と共に生きる会」(熊本市)の海北(かいきた)由希子さん(54)は覚えている。事件後から交流を重ね、支援活動を続ける中、こう信じている。「その言葉が彼女の全てです」
レー被告を知ったのは20年11月、同市内の自宅のテレビで流れた、被告の逮捕を報じたニュースだった。約10年前から外国人留学生に日本語を教えるボランティアや実習生への生活支援をしていたが、被告のことは知らなかった。
活動の中で妊娠した実習生を支援した経験もあっただけに「誰にも頼れず、孤立したまま出産せざるを得なかったリンさんを助けられず、申し訳ない思いでいっぱいになった」。
海北さんは21年春ごろからコムスタカの活動に携わるようになった。後に「『会ったことのない日本人はみんな怖い』と(被告が)話していた」と通訳のベトナム人女性から聞いたように、初めて会った被告はうつむいたままで、ほとんど会話もなかったという。
一緒に食事をしたり、車での送り迎えをしたりする中、レー被告は少しずつ心を開き、自分のことや思いを語ってくれた。
妊娠許さぬ圧力、女性を追い込み
ベトナム南部出身の被告は、高校卒業後の19歳で来日。当初抱いていた日本のイメージは「桜がきれいで都会で漫画が有名な国」だったという。来日時に背負った借金約150万円の返済のためや、年の離れた弟が大学まで通えるようにと働き、実家に仕送りをしていたと教えてくれた。
一方、実習先では「『妊娠したら大変なことになる』『生理は来ているか』と毎月のように言われていた」とも明かした。海北さんは「妊娠を許さない圧力の中、彼女が誰にも相談できない状況に追い込まれたのは当然だ」と訴える。
上告趣意書の提出前日、レー被告は通訳の女性と熊本市内でタケノコ掘りをした。根元から二つの芽が出たタケノコを大事そうに持ち帰った被告は、こう言ったという。…
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