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ウクライナ侵攻を受けてロシアに経済制裁を科した日本に対し、ロシアは2022年3月、平和条約交渉の事実上の打ち切りを通告した。一方、通告から1年となった21日、岸田文雄首相はウクライナを電撃的に訪問。短期的な日露関係の改善は一層困難になっている。また、日米欧との対立が深まるロシア側の「脱・西側依存」も進んでいる状況だ。【大前仁】
外務省幹部「後悔していない」
「岸田政権が続く限りは無理だと思う」。日露間で平和条約交渉が再開される見通しを尋ねると、ロシア政府で長年、対日政策を担ってきた関係者は、毎日新聞の取材にこう断言した。そのうえで対露関係に力を入れてきた第2次安倍政権(12~20年)時代に言及し、2国間関係が「一歩一歩積み上げられてきたのだが、いきなり穴に落とされた感じ」と指摘。現在の日露関係については「日本と北朝鮮のような関係になったともいえる」と評する。
ロシアが22年2月24日にウクライナに対する「特別軍事作戦」を始めると、欧米諸国に同調した日本は矢継ぎ早に制裁を発動した。中でも大きなインパクトとなったのは、2月末に決めた在外資産の凍結を柱としたプーチン大統領への制裁だった。
歴代の日本首相はプーチン氏と個人的な関係を築き、平和条約問題に風穴を開けようと試みてきた。そのプーチン氏への制裁は、プーチン政権が存続する限り、平和条約締結を諦めるというメッセージとも受け取られかねない。外務省でこの案件が協議された際には、平和条約交渉への影響を考慮して、プーチン氏個人への制裁に反対する声も上がった。会議の様子を知る関係者はそう証言する。
一方で制裁に賛同した当時の外務省幹部は「後悔していない。隣国の民間人を殺害するような国とは平和条約を結べるわけがない」と言い切る。「プーチン政権がこの後もずっと続くわけではない。(ロシアで次の政権が誕生した)後で再開すればいい」と考えたと明かす。
このような日本の動きに対し、前述の露政府関係者は「それが日本の選択ならば、こちらとしては何も言うことはない」と述べ、プーチン氏への制裁を決めた日本がプーチン政権との対話の打ち切りを選んだとの認識を示す。
岸田首相のウクライナ訪問に対し、露政府や議会は表立った反応は示していない。だがソーシャルメディア上では「ロシアはアジアでの重要な同盟相手を失った」と日露関係の悪化を嘆くロシア人のものと思われる投稿も見られる。
制裁発動から1年が過ぎたが、日本側が期待をかけたような「プーチン後の世界」が訪れるような予兆は見えてこない。…
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