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第95回センバツ高校野球

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氷見 ブルペン支える元プロの元阪神園芸職員 甲子園との深い縁

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走者を置いたノックで、三塁に走る氷見の選手=岐阜市で2023年2月12日、山崎一輝撮影 拡大
走者を置いたノックで、三塁に走る氷見の選手=岐阜市で2023年2月12日、山崎一輝撮影

 高校球児、プロ野球選手、グラウンド整備――。さまざまな形で甲子園に関わってきた。プロ野球・阪神などで活躍し、阪神甲子園球場の「神整備」で知られる「阪神園芸」の職員も務めた山川猛さん(68)が、氷見(富山)のコーチとして甲子園に帰ってきた。18日の開会式はスタンドから元気に行進する選手たちの姿を見守った。「この日本一の球場で思い出をたくさん作ってほしい」と願う。

 富山県から21世紀枠で初めてセンバツ出場を決めた氷見は、海沿いの街を見下ろす丘陵地にある。2月上旬、敷地内にある雨天練習場で選手たちがゴロの捕球練習をしていた。「ゲームセットまで油断したらあかんぞ!」。ノックを打ちながら声をかけるのは山川コーチ。その野球人生は甲子園と切っても切れない縁がある。

氷見の室内練習場にあるブルペンを、トンボをかけて整備する山川猛コーチ=富山県氷見市で2023年2月7日、円谷美晶撮影 拡大
氷見の室内練習場にあるブルペンを、トンボをかけて整備する山川猛コーチ=富山県氷見市で2023年2月7日、円谷美晶撮影

 兵庫県姫路市出身。東洋大姫路(兵庫)3年時に夏の甲子園に出場し、逆転満塁本塁打を放った経験を持つ。大学、社会人を経て1979年に西武にドラフト3位で入団。83年に阪神へ移籍し、33歳で現役を引退した。

 阪神のコーチを務めた後、一度は建設会社に勤務したが、再び阪神に復帰。スカウトとして編成に携わった。その後、「阪神園芸」に勤務し、阪神戦や春夏の甲子園大会でグラウンド整備に汗を流した。

 近年、「神整備」と話題の阪神園芸だが、その仕事は緻密だ。山川さんは「みんな職人ですよ」と懐かしむ。プロ野球ではイニングによって整備時間が異なり、専門用語も多い。山川さんはいつも手帳に書き留めて、必死に覚えたという。試合中も打球がイレギュラーする場所がないか、モニターごしに目を凝らして確認する。夏場は1日に何回も外野に水をまき、定期的に雑草を抜き、芝生を刈りそろえた。

氷見のエースの青野拓海投手にアドバイスする山川猛コーチ(左)=富山県氷見市で2023年2月7日、円谷美晶撮影 拡大
氷見のエースの青野拓海投手にアドバイスする山川猛コーチ(左)=富山県氷見市で2023年2月7日、円谷美晶撮影

 2020年に妻の母親の介護のため、夫婦で富山県氷見市に移住した。中学生の指導に関わっていたところ、氷見の関係者から声がかかり、22年9月に野球部のコーチに就いた。捕手出身の目でバッテリーを指導し、他の野手にもノックを打ちながらアドバイスする。

 エースの青野拓海投手(3年)は山川コーチから軸足の使い方やリリースポイントなどの指導を受け、球速がアップした。「刺激になるし、信頼しています」と感謝する。山川さんは「自分も周りの人に育ててもらった。口下手だけど、経験を踏まえた話をして、少しでもレベルアップしてくれたら」と願う。

選手としてプレーし、阪神園芸ではグラウンド整備に携わった甲子園に、コーチとして戻る山川猛さん=富山県氷見市で2023年2月7日、円谷美晶撮影 拡大
選手としてプレーし、阪神園芸ではグラウンド整備に携わった甲子園に、コーチとして戻る山川猛さん=富山県氷見市で2023年2月7日、円谷美晶撮影

 山川さんは氷見の全体練習後、ブルペンに歩み寄ると、水をまき、よくならしてから丁寧にトンボをかける。しっかり手入れされたブルペンは凹凸がなく、投手が投げる時にはしっかり足を踏み込むことができる。

 センバツの選考委員会が開かれた1月27日、オンラインの画面ごしに「氷見」の名前が読み上げられた時は、目に熱いものがこみ上げた。「自分が甲子園出場を決めた時と同じくらいうれしくて、久しぶりにわくわくした」

 氷見の選手たちが再び連れてきてくれた甲子園。これまではグラウンドの中にいることが多かったが、今回はスタンドから声援を送る予定で、それも新鮮だ。「全国の高校生が目標としている場所。いろいろな人に感謝して、自分らしくプレーしてほしい」。思い入れの深い聖地で、山川さんにとっても新しい思い出が増える。【円谷美晶】

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