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「今までの履正社やない。甲子園でも走りまくったろうと思ってますわ」。18日開幕の第95回記念選抜高校野球大会で、甲子園初采配となる履正社(大阪)の多田晃監督(44)は力を込める。2019年夏の甲子園優勝など全国有数の強豪校に育て上げた岡田龍生前監督(61)=現・東洋大姫路監督=の後を継ぎ、22年春に部長から監督になった。伝統的に強打がチームカラーだが、多田監督は新路線を打ち出して、監督としての聖地初勝利に挑む。
伝統の強打に機動力を加えて
履正社はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表「侍ジャパン」メンバーの山田哲人選手(ヤクルト)、本塁打王経験者のT―岡田選手(オリックス)、ロッテの若き主砲・安田尚憲選手ら強打者を輩出してきた。19年夏の甲子園も井上広大選手(阪神)や小深田大地選手(DeNA)らで組む強力打線を擁し、一度も盗塁せずに初優勝を勝ち取った。
OBの多田監督は現役時代に主将を務め、甲子園出場こそ逃したが、卒業後の06年からコーチや部長として後輩を支えてきた。「岡田先生の野球は僕が一番知っている」と言い切る。
「履正社野球の申し子」が機動力にかじを切ったきっかけは、悔しい敗戦だった。昨年の夏と秋の大阪大会で、ライバルの大阪桐蔭といずれも決勝で対戦した。しかし、世代ナンバーワン左腕の呼び声も高い前田悠伍投手(3年)に抑え込まれ、両試合とも0―7で敗れた。「あれだけの投手は普通にやったらなかなか打ち崩せない」と悔しそうに振り返る。
また、21年の秋季近畿大会1回戦でも、京都国際の好左腕・森下瑠大投手(DeNA)を打ち崩せず、0―3で敗れた。「森下君はこちらの走者をまったく意識せずに、自分のペースで投げていた。もっと揺さぶりをかける必要があった」と反省する。
機動力を積極的に使うことは、こうした苦い経験から得た打開策だ。「機動力があることを相手に意識させられれば、必ずしも走らなくてもいい。盗塁されるかもしれないというだけで、相手は配球や守備位置で対応を迫られる。そういうプレッシャーは大舞台でより大きくなる」
選手の意識も変化してきた。多田監督は昨秋の練習試合などで、相手投手のフォームの癖を見破った選手から「出塁したら三盗行っていいですか」とベンチで耳打ちされた。答えはもちろん「どんどん走れ」。昨秋の公式戦ではノーサインの盗塁も成功させた。
多田監督の改革について、恩師の岡田前監督は「思い切りやったらいい。今までの野球に新しい要素がプラスされたら面白い」と背中を押す。さらに、「多田監督は高校時代から真面目で熱心。今は自分の色を出そうと必死にやっているはず。選手と一緒に試行錯誤しながら進めばいい」とエールを送る。
監督に質問するため、選手が列を作る
機動力という新たな攻め手を得ても、強打の看板を下ろしたわけではない。今冬はスイングスピードを上げる練習に重点的に取り組んできた。平日約4時間の練習時間を有効活用するため、ピッチングマシンと投手が横一列に並び、6人が一斉に打撃練習を行う「6カ所バッティング」や紅白戦などで打力を磨いた。チャンスメーカーの西稜太選手(3年)は「前田君に(昨年の)夏も抑えられて、スイングスピードの必要性を感じた。甲子園ではやり返したい」と意気込む。多田監督は「前田君はもちろん、全国にはレベルの高い投手が多い。得点力は当然必要」と話す。
多田監督は選手たちとのコミュニケーションにも積極的だ。主将の森沢拓海選手(3年)は「多田先生は年が近い分、兄貴みたいな感じで話しやすい。練習メニューを選手から提案することもある」と明かす。練習の合間に監督の前に何人もの選手が質問するために並ぶこともあり、多田監督は「分からないことはいつでも聞きに来いと言っている。質問してくれることで、選手の悩みや目標も分かってアドバイスしやすい」と話す。
夏の甲子園では19年に優勝したが、センバツは14、17年の2回の準優勝が最高成績だ。多田監督は「選手たちも私も目標は出場じゃなくて優勝。日本一のチームになりたいんです」と力を込める。新しい特長を備えた「シン・履正社」が10回目の春に初の頂点をにらむ。【木村敦彦】
多田晃(ただ・あきら)監督
1978年5月20日生まれ。大阪府出身。履正社高時代は捕手で主将を務めた。高校卒業後、社会人生活を送りながら佛教大で教員免許を取得。2006年から母校のコーチを務め、21年に部長に就任、22年から監督。情報科教諭。
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