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低成長が続く日本で今、防衛費が増額されようとしている。ロシアがウクライナに侵攻し、台湾有事も懸念される中、国防の強化には一定の理解も広がっている。だが、増税などで生活に影響が及ばないかも心配だ。「強兵なき富国」の時代は終わったのか。日本経済史が専門の鎮目雅人・早稲田大教授に、過去の歴史から見えるものを聞いた。【聞き手・宇田川恵/オピニオングループ】
国防費は投資ではなくコスト
――「富国」と「強兵」は歴史的にどう取り組まれてきたのでしょう。
◆まず、国防費をどう捉えるかですが、国防費というのは、突き詰めれば、物を破壊したり、人を殺したりするためのものです。何かを生産するための投資ではなく、本質的にコストと言えます。コストはできれば少ない方がいい。その分で生活を豊かにしたり、経済を発展させたりできるからです。
つまり、「富国」と「強兵」とは、どちらかを得るためには、どちらかを犠牲にしなければいけないというトレードオフの関係にあることが多いのです。
歴史を振り返ると、明治政府の国家目標は富国と強兵の両方を同時に実現する「富国強兵」でした。当時の日本は外圧で開国を強制され、何もせずにいたら西洋諸国の植民地になりかねず、国防を強化する必要に迫られました。しかし、近隣諸国と戦争するほどの国力はないと判断し、当初は対外戦争をせずに国防費を抑え、富国に努めました。その結果、産業が育ち、輸出で外貨を獲得してインフラ整備などにつなげられたのです。
――明治初期は「富国」が重視されたと?
◆1873年、当時のリーダーたちの間で行われた征韓論を巡る論争では、当面は対外戦争を避け、国内の産業を育成する「殖産興業」に重点をおくという方針が採用されました。
また、90年に開設されたばかりの帝国議会でも、軍備を増強するのか、それとも軍事費を増やさずに税を軽くし、国民の生活を安定させる「民力休養」にするのか、という問題が大きな争点でした。地方から選出された議員たちは地元の経済を担う名士であり、経済重視を強く訴えたといいます。
しかし、経済力をつけると、日本は対外戦争に動き出すことになります。日清、日露戦争を戦い、第一次世界大戦に参戦し、やがて太平洋戦争へと突き進んだのです。
1885~1936年度の国防費は国内総生産(GDP)比で平均約5%でしたが、44年度には…
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