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結婚って何ですか

パートナーとの関係が多様化するいま、「結婚」について改めて考えるための特集ページです。結婚に関するさまざまな疑問を取り上げます。

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「いばらの道…」 でも、これが家族の幸せの形 pecoさん

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pecoさん=所属事務所提供
pecoさん=所属事務所提供

 タレントのryuchell(りゅうちぇる)さん(27)とpeco(ぺこ)さん(27)が2022年8月、法的な婚姻関係を解消し、「人生のパートナー」として今後も共に歩んでいくことを公表しました。ryuchellさんと「新しい家族の形」を築いていくpecoさんに、今の心境や家族に対する思いを聞きました。【岩本桜】

 ryuchellさんとpecoさんは16年12月に結婚し、18年には長男が誕生した。自身のセクシュアリティー(性的指向や性自認)に悩み、「夫」という肩書に息苦しさを感じていたというryuchellさんは、pecoさんと話し合いの末に婚姻関係を解消。2人は現在も家族としての関係を続けている。

 ――ryuchellさんからは、なんと打ち明けられたのですか。

 ◆今日に至るまでの人生や、どういうタイミングで自分のセクシュアリティーに気づいたか話してくれました。(セクシュアリティーを)カミングアウトするまでの2カ月間、ryuchellの様子がおかしくて「一体何なんだろう」と思っていたので、話してくれた時は点と点がつながった気がしました。

 ryuchellは「だましてごめんなさい」と言ってくれましたが、私は「だましてたの?」とは思わなくて、「つらかったよね」「相当な勇気がいるだろうに打ち明けてくれてありがとう」と心底思いました。

 ryuchellは自分のセクシュアリティーについて、「墓場まで持っていくつもりだった」とも言ってくれました。ただ本当に墓場まで持っていけたとして、ryuchellが80、90歳になってもずっと一人で抱え続けていたらと考えるとぞっとするし、もっとつらいことになっていたかもしれません。

 今回発表させてもらった後、「結婚する前に言えばよかったのに」「子供ができる前に言えばよかったのに」といった意見がありましたし、正直私も実際そう言ったこともありました。

 でも、「ryuchellと結婚しなければよかった」とは一度も思っていないし、これから何があってもそれだけは思いたくない。私もryuchellと一緒にいた8年間、全く気づかないところで傷付けていただろうし本当に申し訳ないと思います。

 それに全てがryuchellだけの責任ではないと思うので、一緒に家族を守るために、何よりも息子を守るために乗り越えていきたい気持ちになりました。

 ――新しい家族の形を選ぶことに不安はありましたか。

 ◆不安というより、「そんな家族の形ってあるのかな」と思いました。カミングアウトしてもらった直後、1人ですごく調べたんですよ。「夫 カミングアウト」などいろいろな言葉で検索しました。

 何パターンかは出てきましたが、全く同じものは出てこなかった。だから「何かを頼りにしたって仕方ない」と思いましたし、息子が変わらずハッピーでいられて、ryuchellが少しでも前に進める方法を考えました。正直不安になる暇もなくて「やるしかない」といった感じでした。

 皆さんから「女性として幸せになった方が良いよ」と言っていただくこともありましたが、私は全くそれを求めていなくて。家族の幸せが私の幸せであり、息子が毎日元気で過ごしてくれること以上に幸せなことはないからです。

 これまでryuchellにもらった愛は本当に信じられるし、ryuchellと結婚して息子が生まれてきてくれたことも私の責任です。夫と妻という形ではないとしても、お互いを尊敬し合える愛や、家族として一緒に息子を育てたいという気持ちを持ってしっかり前に進んでいけると思いました。

 いばらの道ですが、家族にとっての一番の幸せを考えるとこの選択になりました。

pecoさん=所属事務所提供
pecoさん=所属事務所提供

 ――新しい家族の形を選んだ後、ryuchellさんに何か変化はありましたか。

 ◆これまで誰にも言っていなかったことを皆さんにお話しさせていただき、今まで傷つかなくてよかった分も傷ついてしまったことはあったと思います。

 私も理解してあげたい気持ちでいっぱいだけど、きっと100%は理解してあげられないと思うので、どうやって寄り添ってあげたら良いんだろうと日々模索しています。

 ですが大半の方は「ryuchellはryuchellのままで良いよ」と優しく受け止めてくれました。ryuchellも自分がなりたいryuchellに磨きがかかっていて良かったと思います。元々根っこにあった部分が表に出てきて、自分らしく生きられているのではと思います。

 ――pecoさん自身、何か変わったことはありますか。

 ◆ちょうど1年前にカミングアウトしてもらい、最初はショックというよりは気持ちがついていけませんでした。でも息子がいるので落ち込む暇もなくて、それは私にとってありがたかったです。そうやって日々が過ぎていき、知らない間に受け入れられていました。

 私はryuchellに夫として求めることは何もないし、今までのryuchellがうそだったとも思わない。ただ息子の親としての責任と自覚さえ持っていてくれれば、他に何も望むことはないです。ryuchellがこれからどうなろうと私は横で応援していたいし、一緒に息子の成長を楽しみたいです。

 ――新しい家族の形を選んだことは良い選択だったと思いますか?

 ◆今の時点ではもちろんまだこの選択が100%良かったかは分からないですけど、「これで良かったね」と思えるように日々進むしかないですね。

 ――婚姻関係を解消した後は、インスタグラムでファミリーリングをはめている写真を投稿していました。

 ◆2人ともずっと結婚指輪をはめていましたが、「夫である証拠」ということでryuchellからしたら結婚指輪さえしんどかったようです。ただ指輪があることで身が引き締まりますし、何か家族の証しみたいなものがあれば良いよねと話をしている時にryuchellが「家族の指輪はどう?」と言ってくれました。

 たかが指輪だし、指輪がなければ家族じゃないというわけではないです。ただ常に目に入る場所にあるし、良い意味で重みがあって身が引き締まると思うので、作って良かったです。

 ――結婚に対する考えを聞かせてください。

 ◆結婚は人生全てを懸けてするものだと思っているし、それは今でも変わらないです。だからこそryuchellからカミングアウトしてもらっても一緒にいるんだと思います。

 あと子供がいるといないとでは全く違います。私とryuchellのことで「家族」という息子の居場所を壊したくないし、壊すべきでないと思います。どんな形であれ、自分が選んだ人とその人との間に来てくれた息子への責任だけは守り続けようと思います。

 ――pecoさんにとってryuchellさんはどんな存在ですか。

 ◆元々は友達やきょうだいみたいな存在だと思っていて、それは今も変わらないです。そこから夫と妻という肩書が抜けただけという感じです。どんな形であれ、私や息子の人生に必要な人です。

 pecoさん

1995年、大阪府生まれ。原宿のカリスマモデルとして人気を集める。2016年にryuchellさんと結婚し、18年に長男が誕生。22年に法的な婚姻関係を解消した。

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