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LGBTなど性的少数者に対する差別の解消は、一刻の猶予もならない課題だ。その一歩に過ぎない法整備でさえ、岸田文雄首相は、自民党内の事情を優先し、先送りするというのだろうか。
首相秘書官による性的少数者や同性婚への差別発言を受けて、首相が「LGBT理解増進法案」の国会提出を検討するよう党内に指示してから2カ月近くたつ。
だが、法案提出の見通しは全く立っていない。法案に慎重な保守層に配慮し、統一地方選の最中での党内対立を避ける思惑があると言われている。
政治の動きが足踏みを続ける中、トランスジェンダーに対するヘイトがネット交流サービス(SNS)上で拡散し、深刻な問題となっている。
生まれた時の性別は男性で、性自認は女性という、トランスジェンダー女性に対し「LGBT法ができたら、心は女だと言っただけで、女湯に入れるようになる」という、事実とは異なる言説が広がっている。
銭湯などの公衆浴場に入れるかどうかは、施設管理者が状況に応じて個別に判断する。当事者はこれまでも施設管理者とその都度、話し合い、時間帯を分けて入浴するなどの工夫をしてきた。
心が女性と言っただけでは、浴場の利用ルールを無視して女湯に入ることはできない。LGBT法ができたら、それが可能になるというのは誤りだ。
性的少数者の子どもがいる親たちは、「子どもたちは、社会の深刻な差別によって被害を受け、苦しんでいる。自ら命を絶ってしまう人もいる」と訴える。
LGBT理解増進法という理念法ではなく、差別の禁止規定を盛り込んだ法整備を求め、要望書を首相補佐官に提出した。差別は人権の問題であり、命に関わる。
与党内や経済界からも対応の遅れに批判が出ている。経団連の十倉雅和会長は、LGBTへの差別禁止や同性婚を認める国際的な流れの中で、日本の現状について「恥ずかしい」と述べた。
広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)までに法案を国会へ提出すればいいと考えているのなら、議長を務める岸田首相の人権感覚が疑われかねない。