大手4電力、カルテル「ハイレベル会合」 法も消費者も軽視

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記者会見で謝罪する関西電力の森望社長(右)=大阪市北区の同社本店で2023年3月30日午後4時53分、妹尾直道撮影
記者会見で謝罪する関西電力の森望社長(右)=大阪市北区の同社本店で2023年3月30日午後4時53分、妹尾直道撮影

 公正取引委員会は30日、関西、中部、中国、九州の電力大手4社が、電力自由化前の営業エリアでの電力販売を互いに制限するカルテルを結んでいたと認定した。公取委の調査では、電力の価格競争を組織ぐるみで封じていた実態が浮き彫りになった。電力大手では電力自由化を骨抜きにする不祥事が次々と発覚しており、再発防止のために電力システム改革を求める声が強まっている。【柿崎誠、浅川大樹、横山三加子】

「ひとつ、会って」社長から課長まで

 「ひとつ、会ってお話ししませんか」。2018年、関電と大手3社の副社長や専務らがそれぞれ声をかけ合い、2社間の「ハイレベル会合」が頻繁に開かれていた。その実態は、電力価格を引き上げる密談だった。

 今回のカルテルは、関電による安値攻勢が発端となった。16年に電力小売りが全面自由化され、電力大手がそれぞれの営業エリアで電力を一元的に販売する「地域独占」が消えた。企業向け販売は00年から段階的に自由化されていたが、新規参入の電力会社「新電力」との競争が激化するなか、電力大手は他電力の営業エリアに進出する動きを加速した。

 関電は17年11月、中部電エリアの名古屋市と、中国電エリアの広島市、岡山市に営業拠点を開設。18年には九州エリアを含めて企業への営業活動に乗り出した。これは関電が18年春に大飯原発3、4号機(福井県)を再稼働させたことを足がかりに、家庭向け電気料金の値下げに踏み切った時期と重なる。業界関係者は「関電が原価ギリギリの安値を企業に提案し、攻勢をかけていた」と振り返る。

 最大手の東京電力ホールディングス(HD)も18年夏、沖縄を除く全国で企業向け電力の販売を本格化し、「強気の営業攻勢」(東電HD幹部)をかけた。福島第1原発事故の廃炉や賠償債務を抱える東電は、当時の経営再建計画で「域外での電力販売の拡大」を収益確保策の柱に掲げていた。

 電力自由化の目的通り、競争促進による電力料金の引き下げとサービスの多様化が進んだようにみえた。しかし、安値競争の結果、電力各社は採算の確保すらままならなくなり、「競争をやめるための腹の探り合いが始まった」(関係者)という。

 電力会社にとって企業向けの大口販売は利幅が薄い。安値販売が自らの首を絞める状態となっていた関電にとっても、他電力からの誘いは「渡りに船」(関係者)だった。そして関電は、中部、中国、九州の大手3社とそれぞれ、企業向け電力について、相手地域での営業活動を控えたり、入札でわざと高い見積もりを提示したりする“不可侵協定”を結んだ。

 公取委によると、電力4社の役員らは互いの会社を行き来し、時に会食をした。情報交換は部長、課長級などあらゆる階層に及び、…

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