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第95回記念選抜高校野球大会は第11日の31日、準決勝があり、第2試合で大阪桐蔭と報徳学園(兵庫)がぶつかる。大阪桐蔭のエース左腕・前田悠伍投手(3年)と報徳学園の林純司・二塁手(3年)は中学時代にバッテリーを組み、今でも年末には会って近況を報告し合う仲だ。高校入学前には「甲子園の決勝で戦おう」と誓い合った。決勝ではないが、準決勝の大舞台。切磋琢磨(せっさたくま)してきた盟友がついに聖地で激突する。
前田投手と林選手はともに滋賀県長浜市出身で、地元の硬式チーム「湖北ボーイズ」でプレーした。互いを「ゆうご」「じゅんじ」と呼び合い、チーム内で一番仲が良かった。
林選手は遊撃手だったが、中学2年の夏ごろ、当時の捕手とあまり息が合わなかった前田投手の希望で捕手に転向した。小学生の時は捕手だったが、中学では初めて。「中学で内野を始めて、内野って面白いなと思っていた。本当は内野でプレーしたかったが、悠伍が言うなら……」と引き受けた。
前田投手は「内野をやりたがっていたのを知っていたので申し訳ない気持ちもあったけど、それでも純司と組みたかった」。2人は卒業までバッテリーを組んだ。林選手は相棒について「手元での球の伸びや変化球のキレ、当時からずぬけていた」と回想する。さらに、「打者の弱いところ、苦手なところを探すのがうまい。中学時代から考えて投げることができていた」と振り返る。
20年春。新型コロナウイルスの感染拡大により、学校は休校となり、チームの練習もなくなった。その期間、前田投手が送る「山、行かん?」のLINE(ライン)が、2人の特訓が始まる合図となった。
2人の実家の中間付近にある山に集合し、マスク姿で感染対策をしながら、無心で険しい坂をのぼり続けた。約2時間。坂道ダッシュが終わると、短い言葉を交わし、すぐに帰宅した。週に数回の「秘密」の練習で、数カ月間の自粛期間も体を鍛え続けた。
21年春、大阪桐蔭、報徳学園といずれも近畿の強豪校への進学が決まった。ともに地元を離れて寮に入ることになった。林選手の入寮前夜のことだ。準備を終え、家族とだんらんのひとときを過ごしていると、いきなりインターホンが鳴った。モニターを見ると、前田投手が立っていた。
突然の親友の訪問。驚きながら扉を開けると、前田投手が「今までありがとう」とボールを手渡してきた。ボールにはフェルトペンでぎっしりとメッセージが書かれていた。
「甲子園の決勝で待ってます」
「自信満々な悠伍らしいですよね。自分は決勝にいくことが決まっているみたいで(笑い)。でも、家に来るなんて思ってもいなかったので、本当にうれしかった」。他にも「兵庫は強豪が多いけど、負けるなよ」「キャッチャーをしてくれてありがとう」など感謝や激励の言葉が細かくつづられていた。
なぜ、連絡せずに訪問したのか。「やっぱり、サプライズの方があいつが喜ぶかなと思って」。前田投手は屈託なく笑って振り返った。
前田投手は1年秋から主戦として活躍し、前回のセンバツで優勝に貢献した。林選手のメンバー入りは昨秋からだ。
2人は昨秋の近畿大会決勝で初めてぶつかった。大阪桐蔭が報徳学園を1―0で破り、前田投手は6番を担った林選手との直接対決も3打数無安打に抑え込んだ。「絶対に打たれたくないと思ってギアを一段階上げた」。バックネット裏のスピードガンでは他の打者に比べて直球の平均球速が3キロほど上がっていたという。
31日の準決勝は高校生活2度目の対決となる。30日、前田投手と林選手は運命の日を前にそれぞれこう話した。
前田投手は「対戦できてすごくうれしい。純司は一番打たれたくない相手だし、打たれたら調子に乗ると思うので(笑い)、しっかり打ち取りたい」。林選手は「素振りでもしっかり(前田投手を)イメージしている。秋に負けたので、この冬は桐蔭を一番意識してきた。『やっとやり返せる』という気持ち」。
親友だからこそ、絶対に負けたくない――。互いを知り尽くす2人の意地とプライドをかけた戦いだ。【大東祐紀】
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