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シェルターはゼロ 南西諸島の防衛強化、住民の避難態勢に懸念

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陸上自衛隊石垣駐屯地の井上雄一朗司令(右)に隊旗を渡す浜田靖一防衛相=沖縄県石垣市で2023年4月2日午前11時3分、川口峻撮影
陸上自衛隊石垣駐屯地の井上雄一朗司令(右)に隊旗を渡す浜田靖一防衛相=沖縄県石垣市で2023年4月2日午前11時3分、川口峻撮影

 沖縄県・石垣島に3月開設された陸上自衛隊石垣駐屯地が今月に入り、本格稼働した。防衛省は近年、南西諸島に続々と陸自部隊を配備している。中国が台湾への軍事的圧力を強める中、防衛体制の強化を急いでいるためだ。

台湾有事で攻防の舞台に

 「石垣島をはじめとする先島諸島は我が国防衛の最前線に位置する。南西地域の防衛体制の強化は我が国を守り抜く決意の表れだ」。浜田靖一防衛相は2日、石垣駐屯地の開設記念式典に出席し、こう訓示した。

 石垣島とその周辺は、約1200キロにわたる南西諸島で「陸自部隊の空白地域」となっていた。政府は2016年以降、続々と陸自駐屯地・分屯地を開設。日本最西端の沖縄県・与那国島の沿岸監視隊をはじめ、鹿児島県・奄美大島や沖縄県・宮古島に警備部隊、地対空・地対艦両ミサイル部隊を配備した。

 宮古島と与那国島は200キロ以上離れており、ほぼ中間に位置する石垣島への部隊配備により、南西諸島の自衛隊の拠点づくりはひとまず完結する。浜田氏は訓示で「南西地域の隙(すき)のない防衛体制は諸君の肩にかかっていると言っても過言ではない。諸君は国の宝だ」と激励した。

 中国は南西諸島から台湾、フィリピンへと延びる「第1列島線」を台湾有事の際に米軍の接近を阻止する防衛ラインとして重視している。日本が南西諸島の防衛体制強化を急ぐのは、台湾有事が起きれば南西諸島が攻防の舞台になりかねないためだ。自衛隊部隊は第1列島線西側での中国軍の行動を抑え、東側の太平洋に展開しにくくする役割が期待されている。

 石垣駐屯地には、警備部隊とミサイル部隊を中心に約570人が常駐する。ミサイル部隊は、艦船を狙う「12式地対艦誘導弾」と、軍用機やミサイルを撃ち落とせる「03式中距離地対空誘導弾」を運用する。将来的には、在沖縄米海兵隊の一部部隊から改編される海兵沿岸連隊(MLR)との連携も視野に入る。MLRは離島防衛に即応する部隊だ。

 日本は今後も更に南西諸島の防衛体制を強化する方針だ。23年度から5年間の防衛費を総額43兆円とする防衛力整備計画に基づき、23年度中に沖縄本島の勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊を配備するほか、与那国駐屯地に地対空ミサイル部隊や相手の通信の妨害などを担う電子戦部隊を配備することも計画している。

 石垣駐屯地開設を受け、吉田圭秀統合幕僚長(当時は陸上幕僚長)は3月16日の記者会見で「南西地域の防衛体制の強化はまだまだ途上だと認識している。防衛力整備計画に基づき南西防衛体制の強化を着実に図っていきたい」と強調した。【川口峻】

「相手国から真っ先に攻撃される」

 政府が南西諸島の防衛体制を強化する上で、地元自治体や住民の理解は欠かせない。ミサイルの配備先は有事の際に相手国から攻撃されるリスク…

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