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実は「遅れていた」 世界一「幸せな国」のLGBTQ政策

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在日フィンランド大使館で報道や文化を担当するレーッタ・プロンタカネン参事官=東京都港区のフィンランド大使館で2023年3月7日午前11時3分、大野友嘉子撮影
在日フィンランド大使館で報道や文化を担当するレーッタ・プロンタカネン参事官=東京都港区のフィンランド大使館で2023年3月7日午前11時3分、大野友嘉子撮影

 “世界一幸せな国”フィンランドで2月、トランスジェンダーの人々の権利を拡大する法律の改正案が議会で可決された。一方で、「LGBT理解増進法案」に保守層が反発し、議論が先送りになるなど一向に法整備が進まない日本。在日フィンランド大使館のレーッタ・プロンタカネン参事官に話を聞くと、「日本にコメントする立場ではない」とした上で、伝えたいのはフィンランド発祥の人気者「ムーミン」の物語に込められたメッセージだという。【大野友嘉子】

 フィンランドは、国連の「世界幸福度報告」で6年連続で幸福度ランキング1位だ。「幸せな国」のイメージが強いが、意外にもLGBTQなど性的少数者を巡る法整備は「北欧諸国の中では遅れていた」という。

 改正案の可決を機に、大使館の公式ツイッターは、フィンランドの性的少数者に関する法整備を振り返った。プロンタカネン参事官はこう説明する。

 「1971年に同性愛が違法ではなくなりました。それまでは、同性愛者は罰金刑になりました。実際に罰金刑を科せられた人の数は、そう多くはありませんでした。しかし、当事者にとっては(刑罰の対象となる恐れがあるため)生活に直結する問題ですね」

 それから24年後、差別禁止法が施行される。

 「95年に性的指向を理由とする差別禁止法が施行されました。『差別するのは良くないですよ』と、注意するというようなやんわりしたものではなく、はっきりと禁止したという点が画期的でした」

 2001年に法律婚とほぼ同等のパートナーシップ登録が可能になった。14年には同性婚を認める法律が可決され、17年に施行された。この法律制定のプロセスが、大きな転機となったという。

 「同法は、初めて国民のイニシアチブ制度で成立しました。有権者5万人以上の署名が集まれば、国民が法案を国会に提出することができる制度です。この時は、署名開始日になんと10万人以上もの署名が集まりました。まさに草の根の運動でした」

 さらに、今回のトランスジェンダーの権利を拡大する改正案が可決された。

 「以前の法律では、トランスジェンダーの人たちは、自認する性別を法的に証明するために、生殖機能をなくしたことを証明する診断書を提出する必要がありました」

 改正案は「フィンランドをより平等な国に近づけた」と位置づける。「トランスジェンダーが、以前の法律のように医療プロセスを経ることなく、自己申告のみで法的に性別を変更することができます」

 フィンランドは福祉や環境の先進国のイメージがあるが、プロンタカネン参事官は「トランスジェンダーの人権に関して遅れていました」と説明する。

 確かに北欧諸国を見ると、スウェーデンは72年に、性別変更の手続きを含めた法律を制定。デンマークは14年、性別適合の手術といった性別変更の要件を撤廃した。ノルウェーでも16年に6歳から法的に性別を変更できるようになった。

日本では

 だが、日本では当事者らが同様の改正を訴えるものの、法整備が進まない。その要因の一つに、「男性が『心は女だ』と言えば女湯に入れるようになる」などと性別を偽って性暴力をふるう可能性を主張する声がある。実はフィンランドでも同様の議論があったという。

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