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沼野充義・評 『カティンの森のヤニナ』=小林文乃・著

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『カティンの森のヤニナ』
『カティンの森のヤニナ』

 (河出書房新社・2552円)

唯一処刑された女性、足跡追う壮大な旅

 「カティンの森」とは、ロシアの地方都市スモレンスク近郊の森だが、第二次世界大戦中、ここで前代未聞の大虐殺が行われたことで、世界に知られるようになった。ソ連に捕らえられていたポーランド人(その多くは将校やエリート知識人)が、一九四〇年にスターリンの指示を受けたNKVD(ソ連の政治警察)によって銃殺され、埋められたのである。犠牲者の数は二万二千に上る。

 カティンの森で殺されたポーランド将校は、ほとんどすべて男性だったが、一人だけ女性がまじっていた。それが本書の主人公、ヤニナ・レヴァンドフスカ(一九〇八―一九四〇)である。当時まだ非常に珍しい女性パイロットだった。そしてこの事実を知って興味を持った著者の旅が始まった。ワルシャワ、クラクフといったよく知られたポーランドの都市から、ヤニナの故郷であるポズナン近郊のルソーヴォへ。さらにロシアにも足を伸ば…

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