「母は輸血を拒否したまま死んだ」 願った延命、葛藤続けた40年
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親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、多くの当事者がその体験を語り始めています。信仰とは、家族とは、生きるとは。寄せられた「声」をシリーズで届けます。
声を聞いて・宗教2世(13)元CCB・関口誠人さんの場合
「お母さんが危篤だ」。親族から連絡を受け、雪の中を病院まで走った。ベッドに横たわる母は、けいれんしながら心臓マッサージを受けていた。間もなく臨終を告げられたと思うが、はっきりした記憶がない。ぼうぜんとしたまま病室を飛び出し、病院の前にある道路で車にひかれそうになった。信仰を貫き最期まで輸血を拒んだ母。その死を受け止めるには長い時間が必要だった。
ロックバンド「C-C-B(シーシービー)」の元ギタリスト、関口誠人(まこと)さん(63)が母礼子さん(享年54)を亡くしたのは20歳の時だ。子宮がんや卵巣がんを患い、約2年間の闘病生活だった。母はキリスト教系新宗教「エホバの証人」の信者。医師から何度も輸血を勧められたが、「血を避けるように」との教義を理由に拒み続けた。
母が入信したのは、関口さんが小学生の頃。入学式の当日、結核を患っていた歯科医師の父が42歳で亡くなった。
母と子ども3人が残された。寂しさと子育ての重圧でやつれた母の元へ、教団の信者が布教に訪れた。しばらくすると母は毎週末、どこかに出かけるようになった。自宅に近所の信者を集め、聖書の研究を始めた。「楽園でお父さんとまた会えるから」。そう話す母は生き生きとして見えた。
「悪い交わり増える」高校進学も許されず
小学3年の頃から、関口さんも母に連れられて集会に参加した。争いを避ける教義からバスケットボールや野球はやらせてもらえず、「悪い交わりが増える」として高校への進学も許されなかった。
中学を卒業後、清掃のアルバイトをした。仲間から「高校どうしてるの?」と聞かれるたび、「バイトしながら高校に行っている」とうそをつくのが苦痛だった。「友人とも遊べず、嫌で嫌でたまらなかった」と関口さんは振り返る。一念発起して夜間学校へ入学し、昼間に喫茶店で働いて学費を工面した。
バイト代をためて買ったギター…
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