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大阪のIR計画認定 カジノ推進に尽きぬ疑問

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 そもそも賭博頼みで地域振興を図ろうという無理のある政策だ。新型コロナウイルス禍の影響を十分考慮しているようには見えない。立ち止まって考えるべきだ。

 大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)にカジノを含む統合型リゾート(IR)を整備する大阪府・市の計画を国が認定した。初の認定である。

 計画では、最大6000人以上収容の国際会議場や劇場なども設ける。年間売り上げ見込み約5200億円の8割程度をカジノが占める。

 IRは、第2次安倍晋三政権時代に観光戦略の目玉として法整備が進んだ。カジノのほかホテルや展示施設などを1カ所に集め、訪日客を呼び込む狙いだ。

 国は当初、最大3カ所での開設を想定し、多くの自治体が誘致を検討した。だが、ギャンブル施設を招くことへの住民らの反対は根強く、撤退が相次いだ。

 横浜市では誘致反対派の市長が誕生し、和歌山県議会も誘致案を否決した。手を挙げたのは結局、大阪と長崎県だけだった。資金調達面の課題が指摘される長崎の計画は今回、継続審査となった。

 統一地方選前半戦の大阪府知事・市長選ではIR誘致推進を掲げる大阪維新の会が勝利した。

 だが、毎日新聞の出口調査では誘致賛成53%、反対45%と民意は割れた。女性は反対が上回った。

 維新が掲げた「大阪都構想」では2度も住民投票が行われた。IRについても19万人以上の住民が署名で実施を求めたが、維新の影響力が強い府議会で退けられた。

 IRは法律で「民設民営」と定められている。だが、大阪の計画を巡っては、液状化などの土壌対策費約790億円を市が負担することになったため、不当な「優遇措置」だとして、住民らが訴訟を起こしている。今後、人工島の地盤沈下対策などで公費負担が増える可能性もある。

 コロナ禍で生活スタイルは一変した。テレワークやオンライン会議が広がった。大規模会議場のニーズや、カジノ目的の訪日客の動向など不確定な要素が多い。

 IRを巡っては、多くの問題が未解決のままだ。府・市は2029年の開業を目指しているが、このまま進むべきではない。再考する時間はまだ残されている。

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