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図書館は「生活の根拠地」 焦土から出発、建築家の挑戦

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明治期に建てられた紡績工場を改修した洲本図書館。赤レンガの囲いに設けられたゲートは中庭に続き、建物に入るまで段差はない=兵庫県洲本市で2023年3月30日、清水有香撮影
明治期に建てられた紡績工場を改修した洲本図書館。赤レンガの囲いに設けられたゲートは中庭に続き、建物に入るまで段差はない=兵庫県洲本市で2023年3月30日、清水有香撮影

 本棚の間を歩き回り、気になる本があれば直接手にとって自由に読める。そんな図書館の風景が国内で当たり前になるのは、戦後に入ってからのことだ。書庫が中心の閉架式から、「民主主義の時代」を象徴する開架式へ。図書館が大きく変わり始めた1950年代に設計の仕事を始めた建築家、鬼頭梓(26~2008年)は、市民に開かれた自由な空間を手がけ、「図書館建築のパイオニア」と呼ばれた。半世紀に及ぶ活動の中、追い求めたのは「生活の根拠地」としての図書館だった。

 赤レンガが美しい兵庫・淡路島の洲本市立洲本図書館。明治末に建てられた鐘紡の旧紡績工場を改修し、新築部分も含め98年に完成した鬼頭の晩年の代表作だ。坂口祐希館長の案内で正面のゲートをくぐり、100年前のレンガが敷き詰められた中庭を歩く。「洲本図書館は長く公民館に間借りし、『きちんとした新しい図書館を』という市民の声からこの館が生まれました。毎年秋には『図書館市民まつり』が開かれ、多くの人が訪れてい…

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